証明書に相続放棄は反映されない

法定相続情報証明制度


 法定相続情報証明制度とは、相続手続の際に必要となるさまざまな情報を紙1枚にまとめることができる制度のこと。昨年5月にスタートしたばかりの新しい制度だ。

 

 これまでは、親や配偶者が死亡したとき、相続人は不動産登記の変更や相続税の申告、銀行口座の解約などのため、大量の戸籍書類一式を揃えて、法務局や預金などのある金融機関ごとに提出しなければならなかった。

 

 不動産が各地に点在しているようなケースでは煩雑な手続きがハードルとなって名義人を変えないままにしていることが多く、法務省の調査では、全国約11万筆の土地のうち最後の登記から50年以上が経過して所有者が不明になっている可能性のある土地が約3割に上ることが明らかにされている。

 

 こうした所有者不明の土地は新たに宅地造成する際に買収が進まない原因ともなるため、登記を促すために導入されたのが法定相続情報証明制度だ。全国の登記所のいずれかに相続人全員分の本籍、住所、生年月日、続柄、法定相続分などの情報を揃えて提出すれば、偽造防止措置が施された法定相続情報の一覧図の写しが発行される。

 

 以降の手続きは法務省の発行する写しを利用すれば各種の手続きにかかる手間が省けるわけだ。スタート当初は不動産登記の手続きのみでの利用が可能だったが、その後多くの銀行で口座解約の際の書類として使えるようになり、さらに今年4月からは、相続税申告の際の添付書類としても使えるようになった。

 

 証明書には決まった書式などはなく、被相続人と法定相続人全員の関係がひと目で分かるよう相続人自身が一覧図を作成し、それを法務局で確認してもらう形となる。この際、それぞれの住所は任意記載とされているものの、証明書を様々な手続きで利用していくことを考えると、住所もあったほうが便利かもしれない。

 

 注意したいのは、証明書に記載される被相続人と相続人の関係は「子」のような大まかなものでも構わないが、相続税申告の添付書類として使うためには、「子」でなく「長男」「長女」「養子」といった詳しい間柄でないと認められないということだ。

 

 さらに、証明書は戸籍謄本に基づいて内容の正しさを保証するものなので、戸籍のない人、つまり日本国籍を持たない外国人などが関係者にいる場合には、証明書を利用することができない。

 

 また、相続人のなかに相続放棄をした人がいても、証明書の一覧図ではほかの人と同様、通常の法定相続人として記載されてしまうため、そうしたケースでも証明書を使うことは不可能だ。いろいろと便利な制度だが、万能ではないということを頭に入れておきたい。(2018/07/27)