高齢社会化が進むなかで、資産を次世代に継承するだけでなく、本人が満足する人生の閉じ方を検討する〝終活〞の考え方が定着して久しい。平均寿命の伸びに伴い、老後の人生が数十年続くことも珍しくない時代では、高齢化に伴って身体能力が衰えていくなかで老後をどう快適に過ごすかは誰もが考えなければならないテーマだと言えるだろう。
若い頃に買ったマイホームがバリアフリー仕様になっていることはまず考えられず、都市部では3階建て住宅も多いため、年を取れば階段を上がるだけでもひと苦労だ。たとえ今は不自由なく暮らせていても、年を取って体のどこかが不自由になると、今と同じように住める保証はどこにもない。
そうした問題を解決する方策として、自宅をより住みやすくするよう、段差をなくしたり水回りを一カ所に集約したりするといったリフォームを施すことが一つの手段となっている。
老後を見据えた、いわば〝終活リフォーム〞のメリットは、慣れ親しんだ自宅に長く住み続けられるだけでなく、長期間にわたって高齢者施設に入ったり、住みやすいように自宅を一から建て替えたりするよりも、コストがかからずに済むことだ。
築10年を超える持ち家にバリアフリー化を進めるリフォームを行うと、家屋にかかる固定資産税の3分の1が1年間免除されるという税優遇もある。税優遇だけでなく、バリアフリーに向けた取り組みを支援する施策は自治体レベルでもあり、様々なサポートを受けることが可能だ。
さらに終活リフォームは相続税対策にもつながる。建物にリフォームを施すと、国税庁は「リフォーム費用の7割分の価値が上昇したとみなす」という判定基準を用いている。つまり同じ500万円でも、現金のまま持っていれば相続財産として10割評価されるものが、リフォーム費用として使えば7割の350万円で評価される。
住みよい住宅を手に入れることに加えて、評価額を3割削できるわけだ。もしその家を子に相続するのであれば、リフォームの恩恵はそのまま子が受けられることになり、他のところで無駄遣いをするよりはよほど有効な相続税対策だと言えるだろう。(2018/09/03)