改正相続法4つのポイント

順次施行され早くも1年


 昨年7月から順次施行された改正相続税法は4つの大きなポイントが注目された。

 

 整理してみると、まず、相続人全員の同意がなくても遺産分割前に被相続人の預貯金を引き出せるようになった。

 

 相続財産である預貯金債権は遺産分割の対象であり、通常は遺産分割が完了する前には相続人全員の同意がない限り払い戻しはできない。しかし現実には、葬儀費用や借金の返済などを被相続人の預貯金から支払う必要もあるため改正された。

 

 2つ目のポイントは配偶者居住権の創設だ。現行の民法では、配偶者の法定相続分は相続財産全体の2分の1で、自宅を相続すると預貯金は残らず、老後の生活資金が枯渇する状態が見受けられた。そのため、相続財産から「居住権」を分離して残った遺産を分割するように改正された。今年4月1日から施行されている。

 

 3つ目は自筆証書遺言に関する改正で、財産目録についてはパソコンで作成したものも可能となり、法務局での保管が可能になった。

 

 そして4つ目が「特別の寄与料」制度の導入だ。長男の嫁など、相続人以外の親族によって被相続人の介護がなされていることも多いが、これまではそうした親族が尽力しても遺産を相続することはできなかった。改正法では、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人以外の親族が、相続人に対し「特別の寄与料」として金銭を請求できるようになった。遺産分割協議で相続人の合意があれば、相続人は当該「寄与分」を差し引いた後に遺産分割協議を行うことになる。(2020/07/06)