生前贈与7つの誤解

ドタバタ贈与は相続財産に加算


 生前贈与についてきちんと認識している人は意外と少ない。ここでは誤解されがちな7つの点を挙げてみる。

 

 誤解1「毎年110万円以内なら税金はゼロ」年間110万円までの贈与であれば、何回でもできると考えがちだが、毎年110万円を10年間贈与したケースは税法上、1100万円を10年分割で贈与したとみなされる。つまり1100万円をベースとした贈与税がかかることになる。これを防ぐには毎年贈与契約書を作って公正証書とする手がある。

 

 誤解2「確定申告書が証拠になる」実際には、親子間でわざわざ契約書を交わす人は少ない。だが、いざというときには贈与の証拠が必要になる。連年贈与とみなされたときはなおさらだ。その際、確定申告書は贈与契約書の代わりにはならないので注意したい。確定申告書は贈与の定義である「あげます」「もらいます」の書類ではないためだ。

 

 誤解3「贈与として預金名義を替えた」いわゆる「名義預金」も問題になりやすい贈与形態だ。名前だけ替えても、実際の運用や管理が元のままでは贈与とは認められない。

 

 誤解4「余命宣告後に急いで贈与した」医者から余命1年と宣告され、相続税を逃れるためにあわてて子どもに財産を贈与しても、それはなんの意味もない。死亡前3年間のドタバタ贈与は、相続財産に加算されるからだ。非課税枠の110万円未満であったとしても相続財産に加算される。

 

 誤解5「教育資金贈与特例で喜んでもらえる」贈与額が数百万円程度の少額であれば、無税でも受け取った側の労力が大きくなる。税金がかかっても現金でもらって自由に使えるほうがラクと感じる現役世代は多い。

 

 誤解6「相続時精算課税制度なら申告不要」相続時精算課税制度は、いったん選択すると二度と暦年課税を選択できない。相続時精算課税制度の適用対象となると、贈与税の申告が必要になる。

 

 誤解7「二次相続を考えて孫にも贈与する」孫への相続も近い将来必ず起きる。二重に発生する相続税を避けるために孫へも贈与する人が増えているが、孫贈与の場合、贈与税は2割加算となる。(2020/07/03)