土地の贈与「あげるのやめた」

元に戻せば課税されない?


 核家族化が進んだ1975年、旭化成の戸建住宅部門「ヘーベルハウス」が二世帯住宅を発表した。80年には住宅金融公庫が新たに二世帯住宅の種別を規定するなど、二世帯住宅は全国に広がっていった。だが、これはあくまでも土地の少ない都心部の話で、地方では親の持つ広い敷地の一部に息子らが家を新築するケースが多い。

 

 このとき、土地の名義も息子に変更したとする。しかし、後になって「土地を譲ると贈与税がかかる」と知り、贈与税を申告する前に名義を元に戻した。これに対して税務署は「一度でも変更したのだから贈与税は当然納めてもらいますよ。再び戻しているのだから2回分ですね」と課税をするのか――。

 

 結論は、税務署の課税決定処分・更正処分前に名義を元に戻せば、税務上は「贈与がなかった」とされ、贈与税が課税されない。本来、対価を渡さずに財産の名義を変更したのであっても、新たな名義人が元の所有者から財産を贈与で受け取ったものと税務署に推定され、贈与税が課税される。ただ、財産の名義が変更されても、その手続きが双方の贈与の意思に基づくものでなく、やむを得ない理由や錯誤に基づいて行われたものであれば、例外規定として、その受け渡しが贈与税の対象にならないこともある。

 

 つまり贈与税の申告前に不動産の所有権登記を元の名義人に戻すことで、税務上は贈与がなかったものとされる。形式的な名義変更であっても原則として贈与税が課税されるので、安易な名義変更はもちろん、名義借りなどもしないほうが賢明だ。(2019/05/10)