商事信託と民事信託

コストや信頼性、運用方法などで総合的な判断を


 第三者に財産を託して管理してもらう「信託」には、家族や顧問税理士といった個人に委託する「民事信託」以外にも、信託銀行のような専門の機関に頼む「商事信託」がある。

 

 商事信託は、信託業務を専門に扱うプロに任せられるという安心感がある反面、民事信託に比べて財産の運用管理に制約が設けられるというデメリットがある。上場株式や国債といった金融財産は商事信託でも託せるが、不動産や未上場の自社株など、民事信託では自由に委託できる財産が信託銀行には預けられないことも多い。財産運用の自由度としては、非常に厳格な運用規定が定められている成年後見制度と、自由度の高い民事信託の中間くらいと捉えるのがいいかもしれない。

 

 そして商事信託を利用する上で何より忘れてはならないのが、信託銀行に報酬を支払わなければならないことだ。商事信託の報酬は契約成立だけで100万円を超えることも珍しくなく、さらにその後の管理運用のランニングコストが発生する。商事信託の活用を検討する際には、必ず費用についても考えるようにしたい。

 

 信託を活用する上で最も重要なことは、信頼して財産を託せる人を選ぶことに尽きる。受託者に与えられる裁量は大きく、もし悪用されてしまえば委託者や受益者の被害も甚大なものとなる。運用の自由度が高い民事信託の活用を検討していたとしても、残念なことにそれだけの信頼を持って託せる人が見つからないのであれば、いっそ信託銀行や弁護士といったプロに依頼するのも一つの手だ。

 

 コスト、受託者の信頼性、自分の望む資産運用、などの点を総合的に考慮した上で、家族や顧問税理士をはじめとする関係者ともよく話し合い、将来にトラブルの種を残さないようにしたい。(2018/02/16)