税制改正で大きく変わった

設備投資減税をチェック!

製造業以外でも使えるように


 3月末に成立した2017年度の税制改正では、中小企業の設備投資に対する新たな減税措置として、「中小企業経営強化税制」が創設された。これまであった同様の制度に比べて多くの設備に対して優遇が認められるため、製造業に偏りがちだった制度の利用が、今後は他業種に広がっていくことが期待される。ただし適用要件などさまざまな点で細かい変更があったことを踏まえ、万が一にも減税措置を受けられないことがないよう、制度内容をしっかり押さえておきたい。


 2017年度の税制改正で導入された新たな設備投資減税の特例は、今年3月末での廃止が決まっていた「生産性向上設備投資促進税制」に代わるものだ。中小企業に人気の高い制度だっただけに延長を望む声が上がったが、政府としては廃止前の駆け込みによる設備投資を呼び込み、景気浮揚の一助としたい考えがあったようだ。

 

 しかし政府が思ったほどに設備投資は増えず、かといって一度やめるといった制度を延長させるわけにもいかず、結局「中小企業経営強化税制」と名称を変えて、同様の優遇内容を今後も継続する運びとなった。ただし景気が回復するまでの特例と位置付ける考えに変わりはないようで、新制度も19年3月までの設備投資を対象とした時限措置であることは頭に入れておきたい。

 

 優遇内容はこれまでと同様だが、対象となる設備や金額については、さまざまな点で見直されている。要件が緩和された部分も厳しくなった部分もあるが、おおむね、これまで以上に幅広い設備での優遇が認められるものとなった。

 

単品30万円以上で利用可能

 生産性が年1%以上伸びる先端設備を対象とした「A類型」と、生産ラインやオペレーション全体で投資利益率が年5%以上伸びる設備投資を対象とした「B類型」の2タイプがあることに変化はないが、従来と異なるのはその対象となる設備で、まず新制度では、これまでA類型の要件として設けられていた「最新モデルであること」が削除されている。必ずしも高価な最新のモデルを導入する必要はなくなったわけだ。

 

 さらにこれまで税優遇の対象となっていたのはほとんどが機械装置で、器具備品や建物附属設備への適用は限定的だったが、この点を見直して、空調、ボイラー、照明、冷凍陳列棚など、製造業だけでなく商業やサービス業でも広く活用しやすくなる。

 

 特にB類型では「すべての器具備品」が対象となっているため、制度活用の可能性は大きく広がったと言えるだろう。また、「単品30万円以上かつ合計120万円以上」となっていた取得価額も「単品30万円以上」のみに緩和されたため、金額面での適用のハードルもかなり下がっている。

 

 もっとも、一部の設備ではこれまでより対象が狭まっていることもある点には気を付けたい。ソフトウエアでは、これまで単品30万円以上かつ合計が70万円以上であれば制度を利用できたが、今後は単品の価額70万円以上の製品のみが対象となっている。このような要件面での細かい変更があるので、利用の際には必ず顧問税理士などにも相談の上、設備投資をするようにしたい。

 

 制度の適用を受けた時の優遇内容が、取得価額の即時償却か7%の税額控除(資本金3千万円以下なら10%)の選択適用である点はこれまでと同様だ。

 

「経営力向上計画」を作成

 新制度で一番大きく変わった点は、「経営力向上計画」を作成し、事業分野ごとに大臣の認定を受けなければならなくなったことだ。具体的な計画の内容は業種によってさまざまだが、経産省の定めた業種ごとの数値目標に沿って、主にITを活用して生産性向上に取り組むことが求められる。

 

 この「経営力向上計画」をめぐっては、税制改正に先立ち、すでに昨年7月から計画作成を要件とした固定資産税の減免制度がスタートし、開始5カ月の時点で1万件を超える計画が認定されている。これまで必要なかった経営計画を作らねばならないという点では煩雑さが増したとも言えるが、申請書類はペーパー2枚と比較的簡便でもあり、そこまでハードルが高いというものではないようだ。

 

 計画を作成して認定を受ければ、法人税だけでなく固定資産税の減免措置も受けられ、公的金融機関による低利融資や、一部の補助金審査での加点措置なども認められる。税優遇を受けて、さらに経営計画の作成が収益力向上につながれば、言うことはないだろう。

 

 生産性向上の要件を満たせない、つまり新制度の対象とならない設備投資については、これまでどおり「中小企業投資促進税制」が使える。同制度は、中小企業が機械装置やソフトウエア、器具備品などを購入した時に、その取得価格の一部を特別償却したり税額控除したりできるものだ。さらに、これとは別に「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」もあり、業種を絞った上で、「中小企業投資促進税制」と同様の優遇が、より幅広い器具備品や建物附属設備で受けられる。どちらも、「生産性が一定以上向上すること」というような設備の性能についての要件が設けられていない。

 

 両税制とも今年3月末が期限となっていたが、19年3月末まで2年間延長され、優遇内容も中小企業の設備投資については30%の特別償却、さらに資本金3千万円以下の中小企業や個人事業主なら7%の税額控除との選択適用を認める内容で据え置かれた。

 

 ただし注意点として、これまで対象となっていた1台120万円以上のデジタル複合機や合計120万円以上の測定機器など一部の器具備品が延長にあわせて除外されており、対象範囲が狭まっている点は認識しておきたい。

(2017/06/01更新)