年末までにサクッと節税!

保険や共済への加入を検討

相続・贈与の対策も


 2017年も残り1カ月となり、年末を見据えて日々の業務に当たる社長さんも多いことだろう。年末が一つの区切りとなるのは税の世界も同じで、個人事業主の所得税や、相続対策での贈与にかかる贈与税などは12月末までのものが対象となる。さまざまな節税手段を講じるなら残り1カ月が勝負というわけだ。年末になって慌てないよう、今から余裕を持って検討・準備をしておくことで、自分に合った最適な節税手法をフルに活用していきたい。


 事業で利益が出れば、当然のことだが法人税や所得税の負担が増えることになる。もし今年、当初の予測以上に利益を出してしまった社長さんがいたとしたら、うれしい一方で、素直に喜べない部分もあるだろう。前年までの欠損金などで相殺できればいいが、そうでなければ、個人事業者や12月決算の法人は残り1カ月で何らかの対策を講じなければならない。

 

 残りわずかな期間でできる節税策として真っ先に思いつくのが、生命保険などに加入して、保険料を損金として計上することだろう。利益がたっぷりあるのなら、経営者自身が一括払いの保険などに加入することで、以後は保険料を支払わなくて済み、もしもの時に備えることができる。一括払いの保険でなくても、来年分の保険料を前払いすることで今年の利益をある程度圧縮できるのが、保険の強みだ。

 

保険料の一括・前払いで利益圧縮

 もしまだ未加入であれば、取引先の倒産リスクをカバーする「経営セーフティ共済」や、個人事業者が事業を廃止した時などに共済金を受け取れる「小規模企業共済」をぜひ検討したい。これらの共済は掛金の一括前払いが可能で、全額を所得から控除することができる。

 

 特に小規模企業共済は掛金を細かく設定でき、受取時にもさまざまな税優遇があることから、将来にわたって役立つ共済制度となっている。

 

 ただし小規模企業共済の場合は、①建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、不動産業、農業で従業員が20人以下の個人事業主または会社役員、②卸売業、小売業、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で従業員5人以下の個人事業主または会社役員、③①、②に該当する個人事業主の共同経営者――などの要件を満たすことが加入の条件となっている点に注意したい。

 

 だが、今年多額の利益が出たからといって払込額の高い共済などに入り、来年以降、支払いに苦しんで解約するようなことがあっては本末転倒だ。無理なく継続していけるのか、そもそも保障内容は自分の求めるものであるのかなど、考えるべき点は多い。年末になって慌てて「入れる保険に入る」ということのないよう、今から1カ月ほどの時間を使って慎重に検討すべきだろう。

 

 年末までに個人事業主が検討するべきこととしては、「課税事業者の選択」がある。消費税の対象となる課税売上が年間1千万円以下の事業者は、消費税を納める必要のない「免税事業者」となることを選択できる。免税事業者を選べば、消費税分を受け取っても納税義務はない。

 

 だが一方で、大規模な設備投資や建物購入を来年予定しているのなら、課税事業者となることを選択しておくべきだ。課税仕入れ額を大幅に増やして多額の還付金を受け取ることができる。免税事業者を選んでいると後々税務署から不還付という残念な知らせを受けることになるので、課税事業者となるかどうか、設備投資の計画なども含めて、残りの期間で来年の経営戦略をしっかり練りたい。

 

ふるさと納税はお早めに

 年末までの行動は、相続税対策にも大きく関わってくる。毎年110万円までの贈与が非課税となる「暦年贈与」は、12月末までの贈与が対象だ。110万円は贈与する側でなく受贈者1人当たりの上限であるため、子や孫が多くいて、将来的に財産を譲ることが決まっているのであれば、今から110万円ずつを全員に毎年贈与していくことで、数年でまとまった額を、贈与税も相続税もかけずに次世代へ引き継ぐことができる。

 

 暦年贈与を利用する上での注意点は、「毎年110万円ずつ贈与する」という契約を前もって交わしてしまうと、それ自体が「連年贈与」というまとまった一つの贈与とみなされ、後から贈与税が課される可能性がある点だ。連年贈与を避けるためには、毎年贈与額や贈与時期を少しずつ変えることが有効だといわれるが、連年贈与と暦年贈与には明確な定義の違いがないため、確実を期すならば、年ごとに贈与契約書を交わすことが最大の防衛策と言えるだろう。

 

 また大前提として、贈与税は「贈与を受けた側」が納める税金だ。確定申告などに当たり、贈与をした側が親切心から申告書の作成などをすべて肩代わりしてしまうと、「渡した、受け取った」の両者の同意がないとみなされて相続税の課税対象に含められてしまう可能性もゼロではないので注意したい。

 

 そして、年末までに忘れずに済ませておきたいのが「ふるさと納税」だ。同制度では実質2千円の負担でそれ以上の値打ちのある返礼品が受け取れるため、損得という意味ではやらない手はない。返礼品は寄付額が大きければ大きいほど、おおむね高価になるため、住民税額などから算出される「寄付上限額」が高い経営者は、制度の恩恵を最も受けられる層と言えるだろう。年末に近づくにつれて人気の返礼品は〝品切れ〞となってしまうため、こればかりは1カ月じっくりと言わず、早めに手続きを済ませてしまいたいところだ。

(2017/11/28更新)