同族会社が狙われるのはココだ!

役員給与、不動産、貸付金、社用車・・・

調査のキーワードは「公私混同」


 本格的な秋の税務調査シーズンとなった。経営上の意思決定が比較的自由である「同族会社」は、税務調査に対するチェック機能が甘くなることがあり、過剰な節税に走りやすく、調査官の格好のターゲットになりかねない。税務当局は「同族会社は会社の取引と個人的取引を混同しがち」という目でもって調査に臨む。果たしてどのような点を税務当局はチェックするのだろうか。


 同族会社が税務調査で狙われる第一は、「役員給与」の額が適正であるかどうかだ。大会社であれば株主の厳しいチェックや厳格な役員給与規程が存在するが、同族会社は内輪で支給額を決めることができるため、調査官は親族役員への給与が適正かどうかを厳しく確認する。

 

 例えば、バリバリ働いている代表取締役と、名目だけの親族役員の給与が同額だと、親族役員の給与は過大と判断される可能性が高い。また親族役員の給与が、社員から登用した役員の給与より高額である場合も同様だ。

 

 不相当に高額な金額を支給している可能性があると、調査官は当該役員の「職務内容」「勤務状況」「会社の規模」「会社の収益」「使用人への支払状況」「同規模同業他社の役員給与」などから総合勘案して実態を判断する。勤務状況や仕事の実績などを細かく調べるため、給与が適正額であることを立証できる資料は整えておきたい。株主総会や取締役会で承認を得ることに加え、給与額が仕事の内容に見合ったものであると説明できるようにしておくことが重要だ。

 

 税務調査官が目を付けるのは役員給与ばかりではない。会社が役員から借りている不動産の処理があいまいだと、ほぼ確実に突っ込まれるので日頃より気を付けたい。

 

 同族会社では、役員所有の不動産を会社が賃借していることは多いが、この賃借料が世間相場より高額と判断されれば役員に対する給与課税の対象となる。

 

 逆に「社宅」など、会社が役員に貸している不動産について、役員が会社に適正家賃を支払っていれば問題ないが、実際に支払われた家賃が適正価格より低ければ、その差額が給与扱いとなる。適正家賃は、床面積や固定資産税評価額などをベースとした計算方法がしっかりと定められているので念のため確認しておきたい。

 

 調査では社宅の水道光熱費や電話代などの負担者が誰かも注目する。当然、役員個人が負担すべきこれらの費用を会社が払っていれば給与扱いだ。ただし、固定資産税や火災保険料、大規模修繕費などは会社が負担していても問題ない。

 

会社と役員の金銭の貸し借り

 さらに、会社と役員の金銭のやりとりにも気を配りたい。会社や個人の資金繰りの都合上、同族会社は役員と会社間でお金の貸し借りがあっても何ら不思議ではない。処理に注意しないと税務調査で目を付けられることになる。

 

 役員から借りたお金は、運転資金程度の額であれば無利息であっても問題にはならないが、あまりにも巨額のお金を役員から借りたのに利息を受け取っていないと、「役員側が利息収入について租税回避をしているのではないか」という疑いが浮上する。役員もしっかりと金利を取り、確定申告で雑所得として申告しておくべきだろう。

 

 ただし、会社が支払う利息が多過ぎれば、適正な利率との差額が「役員給与」と見なされる。通常より低い利率で貸し付けた場合も変わらない。トラブルを避けるためにも、利率は相場並みにしておくのが無難だ。取締役会で承認を受けた議事録も残しておきたい。

 

 また、会社が銀行借入れをする際には役員が個人保証するケースがあるが、会社が支払う保証料も調査では確認を怠らない。適正な額なら雑所得扱いだが、適正額を超えた部分は給与扱いとなる。保証料の目安は信用保証機関などの保証料となるので、これより高い場合は細かく追及されるようだ。

 

 一方、会社が役員にお金を貸す場合も注意が必要だ。無利息または通常の利率より低い場合には、徴収すべき利息との差額が役員給与となる。やはり取締役会の承認を受け、その際の議事録を保存しておくべきだろう。

 

クルマは「100%業務使用」が原則

 このほか、社用車についても税務調査では目を付けられやすい項目だ。会社が業務用で使用する自動車の取得費は、一定期間での減価償却が認められている。付随費用として会社が支出する保険代や車検代、ガソリン代、そのほかメンテナンス費用ももちろん経費になる。ただし、実態が業務用であっても、いわゆる高級車は減価償却資産として認められにくい。

 

 税務当局の判断基準は、高額な車でも「100%業務に必要か」「100%業務にしか使用していないか」という原理原則に基づくものだ。一般的に、「嗜好性が高いクルマ」は当局から指摘されやすい傾向にある。調査官を納得させるためにも、高額な社用車については少なくとも取締役会の承認を得ておく必要があるといえる。

 

 また、役員が会社の商品を個人的に使用(利用)しているのに対価を支払わないと、その商品(資産)の時価相当額が役員個人に対する臨時の役員給与とみなされ、その分がすべて損金不算入となってしまうこともある。

 

 同族会社の税務調査で最も重要なキーワードは「公私混同」だ。役員の私的な支出を会社の経費としてはいないか細かくチェックされる。「このくらいはどの会社でもやっている」という言い訳は調査官には通用しない。

(2017/10/31更新)