人気観光地で顕著な伸び

2019年の公示地価


 国土交通省が発表した今年1月1日時点の公示地価では、外国人観光客に人気のエリアで地価が上昇するという傾向が顕著にあらわれた。スキーリゾートとして有名なニセコの所在地が上昇率ランキングのトップとなったほか、大阪の市場エリアや京都の八坂神社前の地点などが上位に名前を連ねた。一方で下落率のランキングには昨年の豪雨被害で大きな被害を被った地点が並び、東日本大震災以降に顕著になった災害リスクの地価への影響が今年も示されたかたちだ。


 国交省の発表によれば、全国の地価は前年から1・2%上昇し、4年連続で上昇した。住宅地では前年からプラス幅を拡大し、地方圏では全用途でバブル期以来27年ぶりのプラスに転じるなど、上昇幅は全国で拡大した。もっとも都市部以外の地方では下落幅の縮小は見られるものの全用途マイナスで、下落が続く地点も依然多く、二極化が進む構図に変わりはない。

 

 地価上昇を今年も都市部の商業地が牽引した。全国平均の上昇率が2・8%なのに対し、三大都市圏では東京圏が前年比4・7%、大阪圏が6・4%、名古屋圏が4・7%と軒並み伸びた。さらに、それを上回るのが札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢4都市だ。前年の7・9%をさらに上回る9・4%の著しい上昇を示している。

 

 これだけの伸びを見せた4都市のいずれの観測地点でも、全国の上昇率10位までには入っていない。ランキングに名を連ねたのは、外国人観光客に人気の高い北海道、大阪、京都、沖縄のエリアだ(表1)

 

札幌、仙台、広島、福岡も好調

 全国で最も高い伸びを見せたのは、昨年に引き続き北海道虻田郡倶知安町5-1だった。昨年時点で前年比35・6%の著しい伸びを見せたが、今年はそこからさらに伸び58・8%という驚異の上昇率を見せている。倶知安町は外国人観光客に人気のスキーリゾートであるニセコの所在地で、倶知安町の2地点が全用途変動率ランキングでワンツーフィニッシュを飾った。

 

 続く3位にも外国人観光客が多く訪れる大阪市の「黒門市場」周辺地点(中央区日本橋1丁目)がランクイン。上位10地点のうち3地点を大阪市の繁華街が占め、京都市内も同じく3地点、そして沖縄の2地点が上位に顔を並べた。国交省は全国的な地価上昇の要因として、金融緩和を背景とした法人投資家などによる不動産取得に加えて、海外からの観光客が増加していることで店舗やホテルなどの需要が高まったことが大きいと分析している。

 

 一方、東日本大震災以降に顕著となった災害リスクの地価への影響が、今年もあらわとなっている。全用途での地価下落率が最も大きかったのは、昨年7月の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県真備町の地点のマイナス17・7%だった。さらにワースト2、3にも真備町の地点が17%超の下落率で続いたほか、同県の総社市や広島県安芸郡、呉市といった被災地が軒並み地価を大きく下げた。自然災害によるダメージが、地価下落という形をとって今も被災地を苦しめていることが分かる。

 

 東日本大震災以降、津波のリスクが高いエリアの地価下落傾向は顕著で、特に住宅地では神奈川県三浦市や横須賀市、愛知県美浜町や南知多町といった沿岸地区が今年も下落率のランキングに名を連ねた。

 

東京一強は今年も変わらず

 地価が全国で最も高かったのは、今年も東京中央区銀座4丁目にある「山野楽器銀座本店」で、1平方メートルあたり5720万円となり、4年連続で過去最高を更新した(表2)。もっとも、伸び率はこの2年間で25・6%から一気に3・1%まで落ち着き、都心部の地価には伸びる余地がほとんどないことを表しているとも言えそうだ。

 

 地価が高い10地点の顔ぶれは、前年から地点も順位もそのままだった。住宅地、商業地、工業地すべてで、1位から10位までを東京都の地点が独占した。

 

 都道府県庁所在地の最高価格を見ても、東京都23区(5720万円)は、大阪市(1980万円)、横浜市(1380万円)、名古屋市( 1230万円)、福岡市(980万円)を合計しても届かない圧倒的な高値となっている。

(2019/05/15更新)