不動産管理法人で節税対策

合同会社での新設が急増

低コストで簡単に設立


 2006年の会社法施行で新設された「合同会社」の設立登記が急増している。その背景には、不動産経営に掛かる所得税と相続税の負担を抑えることが可能な「不動産管理法人」を合同会社で設立する人が増えたことがあるようだ。賃貸不動産を個人で所有すると毎年の収益に高額な所得税がかかり、また死亡すればそれまでの収入に相続税が課税されるが、不動産管理法人を設立すればそうした負担を大きく減らすことが可能になる。個人事業からの法人成りが多い不動産管理法人にとって、負担やコストが比較的少なくて済む合同会社は設立しやすい。ただ、合同会社には株式会社にはない経営問題が発生するリスクがあり、不動産管理法人設立の際に安易に選択することは避けなければならない。


 2015年の相続増税で納税者の相続対策への意識が高まり、なかでも個人ではなく法人で不動産経営をする「不動産管理法人」に注目が集まっている。親族を不動産管理法人の役員にして報酬を支払えば、結果として将来の相続財産が減るため相続時の負担を少なくすることができる。さらに、個人事業主だと経費にできない生命保険の保険料などの支出を、不動産管理法人であれば経費として損金にすることも可能だ。

 

 また、所得税は高所得であるほど負担が重くなるが、不動産管理法人を設立すれば、賃貸収入が法人のものとなり、所得を大幅に引き下げ税負担の軽減につながる。一方の法人税は、アベノミクスによって実効税率が29%台に引き下げられているので、法人での不動産経営による節税効果は高まっている。

 

 不動産を持つ個人がこうした税メリットを狙って法人成りするにあたり、株式会社ではなく合同会社を選ぶ人が増えている。

 

 法務省によると、合同会社の年間設立登記数はほぼ毎年前年を上回り、制度ができた会社法施行時(06年)の3392件から16年には2万3787件へと増えている。16年の会社設立登記数(11万4343件)の実に5社に1社が合同会社という状況だ。

 

法務局が定款のひな形を公開

 合同会社が設立できるようになった当初は一般的な認知度が低く、対外的な信頼性が低いと言われていたが、制度が普及して信頼性が徐々に高まり、合同会社の設立に抵抗感がなくなっているようだ。

 

 とくに、不動産業を営む合同会社が急増していることが東京商工リサーチの調べで明らかになっている。不動産業での合同会社設立は4478社で全体の18・8%を占め、業種別でトップだった。3年間の推移をみても、14年は2647社、15年は3755社と確実に増えている。不動産管理法人への注目度の高まりが、合同会社の急増を大きくけん引している状況だ。

 

 不動産管理法人を設立する人は、なぜ株式会社ではなく合同会社を選ぶのか。まず、合同会社は株式会社よりも設立時の負担が少なくて済む点がある。株式会社の設立には公証役場での定款認証が必要で、手数料だけで5万円かかるが、一方の合同会社は定款認証が不要となっている。法人登記の際の登録免許税も株式会社は15万円であるのに対し、合同会社は6万円と割安だ。元々個人で不動産経営をしていた人にとっては、合同会社が株式会社と比べて認知度が低いとされていても、設立時の負担が少ない方を選ぶのは当然かもしれない。

 

全員経営のわずらわしさも

 合同会社を昨年設立した税理士の山端一弥さん(大阪市)は、「定款は法務局が公開しているひな形をベースに作れる。また株式会社の設立と違い、公証役場での定款認証が必要ないので、非常に手軽に手続きできた」として、株式会社よりも設立のハードルが低いことがひとつの魅力だったと語る。

 

 また、株式会社と比べて法人運営上の手間が少ないという点も、不動産経営を個人事業から法人に切り替える人にとってメリットとなっている。株式会社には役員の任期があり、10年経つごとに改選して登記しなければならず、手間とコストが掛かる。株主総会や決算公告も実施しなければならない。しかし合同会社にはこうした決まり事がなく、負担が少なくて済む。

 

 ただし、株式会社にないリスクもあるので注意が必要だ。合同会社は、社員(出資者)全員が役員として業務執行や企業の意思決定に関わる仕組みで、基本的に全員の同意がないと経営判断できない決まりとなっている。合同会社設立の段階では仲が良くても、経営の途中で仲たがいしてしまう可能性はゼロではない。そうなると経営が前に進まなくなってしまうというリスクがある。

 

 有限会社が設立できなくなってから10年が経ち、新たな受け皿として合同会社が普及してきたなか、安易に手を出すのではなく、不動産経営の方針を家族間で事前にきちんと共有し、メリットとデメリットを踏まえて利用するようにしたい。

(2017/10/05更新)