その交際費、損金になりません!

なんてことにならないためのポイント

忘年会・新年会を乗り切ろう


 取引先などとの飲食の機会が集中する年末年始は、交際費の支出が急増する時期でもある。リーマン・ショックの影響で5年連続減となっていた交際費の支出総額は、平成24年を機に持ち直し、最も落ち込んだ時期からわずか数年で6千億円増の3兆4838億円まで戻っている。中小企業は800万円までの交際費を全額損金にできるが、会社が交際費として計上していても、損金にできない「臨時的な役員報酬」と税務署にみなされ、追徴課税をされてしまうおそれもある。損金になるかどうかの線引きを把握し、心おきなく「経費で落とせる接待」を楽しみたいものだ。


 得意先の接待や慰安を目的に支出した交際費は、税法の原則では会社の損金にできず、法人所得から差し引くことはできない。しかし資本金1億円以下の中小企業は、特例により、①交際費のうち800万円以内の額、②交際費に含まれる接待飲食費のうち5割以内の額―のどちらか高い金額を損金にできることになっている。

 

 国税庁の会社標本調査によれば、資本金1億円以下の会社が1年間に支出した交際費の平均額は約118万円で、800万円には程遠い。つまり、ほとんどの中小企業にとって交際費は全額損金で落とせるものと考えて良い。だが、会社が交際費として損金計上していても、税務調査で否認されて多額の追徴税額が課税されることがある。

 

 税務署がチェックするのは、その交際費のなかに役員のプライベートな支出が含まれていないかという点だ。

 

 社長が一人で、もしくは愛人などとともに飲食店で飲み食いをした際の領収書を経理担当者に渡し、支払い分のお金を受け取ったとする。本来は社長が支払うべき費用を会社が肩代わりしたことになり、税務上は社長へ臨時で支給される役員報酬とみなされる。こうした臨時の役員報酬は損金にできない。そうであるにもかかわらず、交際費として損金算入してしまえば、法人税額を本来より過少に申告したことになる。

 

社長のプライベートな支出はNG

 また交際費処理する際に飲食店へ支払った消費税分を仕入れ税額控除していたのなら、役員報酬には消費税分が含まれず控除できないため、消費税も過少申告になってしまう。さらに、役員報酬の支払いの際には源泉徴収しなければならないが、交際費処理していると源泉徴収漏れが発生することになる。

 

 税務署に否認されないためには、プライベートの飲食を交際費で処理しないことは当然として、仕事に関係した支出であることを証拠として残す必要がある。領収書だけではなく、参加した人の名前、勤務先、関係性、人数を記録しておくことが望ましい。いちいち記録するのは面倒だが、税務署に損金不算入を指摘されるおそれを減らすためには、ここまでやっておくべきだろう。

 

 また、交際費の額があまりにも高額だと税務署に疑いの目で見られることがある。取引先との2人での飲食で何十万円も使っていれば疑義が生じる。金額が多いからといって必ずしも税務署に否認されるわけではないが、業務に必要な支出であることを説明できない額であれば、税務署に否認される可能性があることを覚悟しなければならない。

 

心おきなく経費で接待

 交際費支出が多く、損金になる上限の800万円を超えるような会社は、そもそも接待にかかった費用を交際費に含めずに損金で落とすという方法を使いたい。代表的なのが「飲食費5千円基準」で、これは取引先との飲食で1人当たりの代金が5千円以下なら「飲食費」として全額損金にできるというルールだ。1人当たりの飲食費を5千円以下とするために、一回の飲食にかかる費用を分割して領収書を受け取ったり、参加者の人数を水増ししたりすると、事実の隠ぺいまたは仮装とみなされ重加算税の対象になるので気を付けたい。

 

 このルールを適用するには、飲食をした相手やその肩書き、人数を必ず控えておかなければならない。具体的には「株式会社〇〇・△△部、山田太郎部長ほか5人、仕入先」といった内容だ。保存書類の様式は法律で定められているわけではなく、必要事項が記載されていれば問題ない。

 

 5千円以下の「飲食費」であれば交際費の損金限度額にかかわらず経費処理できるが、この飲食費に贈答費用は含まれない。そのためお歳暮を贈る際の費用は交際費として計上することになる。また、年末のゴルフ大会と称して取引先を接待する際にゴルフ場で飲食をすることがあるが、この飲食費はゴルフをするための費用の一部とみなされて交際費になるので、無条件で損金にできるわけではない。一方、得意先が年末に行う業務や行事のために会社が差し入れる弁当の費用は、5千円以下であれば飲食費として損金算入できる。

 

 なお、800万円まで損金になる交際費には、取引先との飲食だけではなく、社員との飲食も含まれるので、部下や同僚と一緒に食事をするのであれば領収書を受け取っておくようにしたい。ただし、特定の部下や同僚だけを伴って飲みに出かけることが続くと、交際費ではなく「給与」として課税されてしまうことがあるので気を付けなければならない。

 

 会社としては可能な限り経費で落としたいが、交際費は税務調査で特に狙われやすいポイントでもある。掛かった費用のすべてを損金にできると思い込まず、注意点をきちんと押さえたうえで処理するようにしたい。

(2017/12/28更新)