規模縮小が命取りとなる?

事業承継税制の注意点


 事業承継税制は、会社を後継者に引き継ぐ際に、相続税や贈与税の猶予制度を組み合わせて活用できる制度だ。生前贈与による株式承継税も軽減することができる。2015年度税制改正では、経営者が存命中に、2代目が3代目に再び贈与しても、贈与税の納税義務が発生しない税制に拡充された。

 

 贈与税で納税猶予となるのは、後継者に株式を一括贈与した際、後継者が保有している株式との合計で3分の2までの株式についての贈与税全額となる。後に、先代の経営者が亡くなれば、贈与税は免除となり、相続税が課税される。一方、相続税の納税猶予は、議決権株式の3分の2以下の部分について、評価額80%の相続税分となる。

 

 事業承継税制の最大のメリットは、同族会社の株式を、継承者が相続する際、自社株にかかる80%、そして贈与税全額が免除されることだ。気を付けたいのは、業績不振などに陥ったとき。制度の適用条件では、継承後5年間は、従業員の80%以上の雇用を平均して維持しなければならない。もし雇用維持ができなくなれば、特例の適用は終了し、猶予されていた相続税の負担が経営者に求められてしまう。

 

 加えて、株の評価は事業が傾いた時点の株価の時価でなく、相続発生当時の株価で計算される。継承者は、納税猶予を受けた時点で、どんなに苦しくても「事業縮小せず」と腹を据える必要がある。(2017/10/30)