「やり過ぎ贈与」で老後資金が目減り

暦年贈与が堅実かも


 夫婦で飲食店を経営していた68歳のAさんは、3年前に引退。現在、63歳の妻とつつましく暮らしている。生活費は、2人の年金合わせて月15万円のみ。引退当初、資産は7000万円あったが、あっという間に3000万円まで取り崩してしまった。

 

 資産が目減りした原因は、孫だ。Aさんは、一昨年と昨年、立て続けに長男と次男にそれぞれ住宅取得資金として1500万円を贈与した。通常の贈与だと一人当たり400万円ほど税金で差し引かれるが、住宅取得資金の贈与であれば非課税となるので「お得だ」と思った。

 

 息子たちに住宅資金を贈与したのは、小学生の孫たちに良好な住環境で育ってほしいと望んだからだ。さらに今年初め、Aさんは、長男の息子である孫に、教育資金一括贈与の制度を利用して、非課税で1000万円を贈与した。

 

 資産が3000万円にまで目減りした時点で、Aさん夫婦はさすがに「これはまずい」と思うようになった。日本人の平均寿命は、女性が87・14歳、男性が80・98歳(2016年)。この後、自分も妻も20年は生きるかもしれない。病気をしたり施設に入居したりすることも人生設計に入れ、老後資金を確保しておくべきだったと反省し、孫には暦年贈与を使って、非課税枠の年110万円ずつあげればよかったと後悔した。(2017/10/03)