【突き当たり、乗り越える】(2014年1月号)


「新しき年のはじめの初春の今日降る雪のいや重()け吉事(よごと)」(大伴家持)▼全20巻、じつに4516首もの和歌を収載して編まれた『万葉集』。そのラストを飾るのが、家持の詠んだこの歌だ(巻二十・四五一六)。初春に降る雪のごとく、良いことが積み重なっていくようにと願ったものだろう▼これと似た歌を『万葉集』のなかに見つけることができる。「新しき年のはじめに豊の年しるすとならし雪の降れるは」(葛井諸会)というもの。万葉の時代、新年に雪が降り積もることは、豊作となる瑞兆だとされていたのだろう。こちらは家持の歌の13年前に詠まれたものだ(巻十七・三九二五)▼さて、2014年がスタートする。4月には消費税率が8%へと引き上げられ、翌年からは相続税も増税となる。いわば「相続税対策ラストイヤー」だ▼相場格言では前年・前々年の「辰巳天井」から一転、「午尻下がり」とされ、事実、統計的にも株式市場は辛抱の年となるケースが多い▼午は干支の7番目で、12進法では前半が終わり後半が始まる位置。午前・正午・午後というのはこのためだ。もとは「杵」の原字である「忤」(ご)が当てられていて、忤には「逆らう」「突き当たる」といった意味があるという▼風雪に逆らって疾駆する駿馬のごとく、難題に突き当たっても力強く乗り越えて、豊穣の年にしたい。