【純金製おりん(3寸5分)】

10,249,200円(税込)

仏具の購入で相続財産圧縮

写真:徳力本店ホームページより
写真:徳力本店ホームページより

 全国各地の有名デパートでは「大黄金展」などと題する催事が頻繁に開かれている。仏壇や仏具は税制上、相続税が非課税となっており「金の仏具を買うと相続税を節税できる」からだ。

 

 国税庁のサイトでは「相続税がかからない財産」として「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物」と説明している。

 

 美術品や骨董品として大事に保管しているのではなく、あくまでも日常的な礼拝の際に使用しているものは「祭祀財産」となる。つまり、仏壇に置いてチーンと鳴らすあの「お鈴」にも、相続税はかからない。

 

 【写真】は江戸時代から金地金や金製品を取り扱っている徳力本店(東京・千代田区)の「純金製おりん」。享保12(1727)年創業の老舗が通常販売している「純金製おりん」の中で最大の商品は「3寸5分」の寸法で呼ばれるもの(写真中央)。その直径は105ミリと手のひらに収まるサイズながら、重量は650グラム。純金製だけに片手で持とうとするとそのズシリとした重さに驚く。価格は1024万9200円(税込。*価格は金相場によって変動するため取材時のもの。以下同様)。

 

 黄金に輝くこの「おりん」を買えば「課税されるはずだった財産」のうち約1000万円が非課税の「祭祀財産」に変わるのだから、課税財産が減った分の相続税を節税できることになる。

 

 「純金製おりん」にはこのほか、「2寸5分」(直径75ミリ・重量300グラム・税込価格486万円)、「3寸」(同90ミリ・同500グラム・同788万4000円)のサイズがある。また、徳力本店では「18金製おりん」も取り扱っており、こちらは通常販売している商品の中で最小のものが「2寸」(同60ミリ・同125グラム・同164万1600円)、最大のものが「5寸」(同150ミリ・同1700グラム・同2062万8000円)となっており、予算に応じた寸法のバリエーションが全部で12種類用意されている。

 

家紋彫り例(徳力本店ホームページより)
家紋彫り例(徳力本店ホームページより)

 日常的に使用するものとして購入した場合、「おりん」が相続税の節税につながる商品であることは間違いない。しかし、ここで注意が必要なのは、相続した後にすぐ換金しようとした場合の価値がどうなるかだ。金製品には、純粋な金としての価値に加工代などの金額がかなり上乗せされている。金製の仏像も同じことだ。

 

 2017年2月現在の金の取引相場は、店頭での買取価格が1グラム当たりおよそ4700円前後となっている。販売価格が約1000万円の「純金製おりん(3寸5分)」の重量は650グラムだから、純粋な金としての売却価格は単純計算で約305万円にしかならない。これだと、相続税の最高税率である55%を課税されても、現金で納税したほうが財産は目減りしない。

 

「18金製仏鈴(雄玄作)」 直径13.5㎝・重量約1500g 11,760,000円(参考価格)(GINZA TANAKA ホームページより)
「18金製仏鈴(雄玄作)」 直径13.5㎝・重量約1500g 11,760,000円(参考価格)(GINZA TANAKA ホームページより)

 田中貴金属グループが運営する「GINZA TANAKA」にも、店内の一角に仏具を陳列したショーケースが並んでいる。数千万円単位の仏像や、上限金額がない特注品なども製造してくれるという。金の買取も行っている同店に、金の延べ棒を売りにきた資産家が、その足で仏具売り場へと向かうケースも少なくないようだ。

 

 同店で「おりん」などの仏具を合計4点、総額約1000万円分購入したという60歳代の会社経営者は「仏具は、たとえどんなに立派なものであっても相続税が非課税だと聞いた。顧問税理士の先生からも、仏具を買うのであれば生前に、しかもローンではなく現金一括で購入したほうがいいとアドバイスされた。税金で取られるくらいなら、なにか記念に残しておきたい気持ちもあった。すぐに換金したら価値が目減りしてしまうのは分かっているが、長く持っていれば金相場が高騰するかもしれない」と、その購入動機を語っている。

 

 確かに、同店が示す「納品予定期日」をみると、5~7週間待ちはざらで、商品によっては3カ月以上待たなければ手もとに届かないものまであるほどの人気ぶりだ。保有している金の延べ棒を売却してでも「おりん」などの仏具を手に入れたいのは、そのままでは相続税がかかってしまうからにほかならない。売却時の換金率や将来の金価格などを考えるよりも、「欲しい」「買いたい」と思った商品を購入すれば相続税の節税になることが、この商品の根強い人気の秘密だろう。

(2017/02/03)

■監修■ 節税市場の顧問税理士

田本啓先生(アレシア税理士法人 代表社員税理士)のワンポイント

 

 仏具は非課税といっても、おりんが仏壇に何個も並んで置かれているのは、いくらなんでも不自然です。投資目的で保有していると判断されないためには、同じような大きさのものをいくつも購入するのではなく、大きなものを1つだけにしておいたほうがいいでしょう。仏像にしても同じことがいえます。同じ仏様を何体も持っていると、非課税財産として認められない可能性があるといえます。