【マイネルツィール号】

牡4歳/父:アグネスデジタル、母:レガシーパス/18戦3勝(獲得賞金24,403,000円)/生産者:田湯牧場(日高)

2,170,800円(税込)

サラブレッドを購入〝馬主事業〟で節税

競走馬の減価償却を損益通算

マイネルツィール号(netkeiba.comより)
マイネルツィール号(netkeiba.comより)

 「ダービー馬のオーナーになるのは、一国の宰相になるよりも難しい」――。

 

 自らが所有するサラブレッドが、競馬界最高のレースである東京優駿(日本ダービー)を制覇し、競走馬の頂点に立つ。すべての馬主が抱く大きな夢だ。

 

 日本中央競馬会(JRA)では、年間50人前後の馬主さんが新規に誕生している。JRAの個人馬主となるには、①過去2年間の所得が1700万円以上であること、②預貯金・不動産・有価証券などの資産の額が7500万円以上であること――といった要件を満たす必要がある。

 

 個人馬主が得る競馬の賞金は、①その年以前3年間の各年に競馬賞金収入がある、②その3年間のうち、年間5回以上出走している競走馬を保有している年が1年以上ある―という条件をいずれも満たしていれば事業所得に、そうでなければ雑所得となる。事業所得となる方が、必要経費にできる範囲が広いため節税上有利だ。また、事業所得であれば、ほかの所得との損益通算が可能になる。さらに、青色申告をしていれば控除しきれなかった損失を翌年以降に繰り越して損金処理することもできる。

 

競走馬の「セリ」、セレクトセールの模様
競走馬の「セリ」、セレクトセールの模様

  競走馬を手に入れる方法としてまずイメージするのは、目の肥えたその道のプロが多数参加する「セレクトセール」などの〝セリ〞ではないだろうか。玄人の熱気に包まれた会場は真剣そのもので、「とてもじゃないが、あそこに参加する勇気はない」と尻込みしてしまうことだろう。ダービーや有馬記念などの大レースを勝った馬の産駒ともなれば、数千万円どころか何億円といった高値が付くことも珍しくはない。

 

 ところが、いまや競走馬はネットでも購入できるのをご存じだろうか。楽天競馬(運営=競馬モール㈱)の「サラブレッドオークション」では、地方競馬に在籍している競走馬や、中央競馬の登録を抹消したサラブレッドが多数「出品」されており、参加者はネットで入札できる。

 

 昨年9月に217万800円(税込)で落札されたマイネルツィール号(牡4歳、父アグネスデジタル・母レガシーパス)は、今年1月に中京競馬場で行われた熱田特別(芝2000m)を勝ち、1着賞金1050万円を獲得。地方競馬でも54万7560円(同)で落札されたヒショウ号が佐賀競馬場の重賞「雷山賞」で優勝し1着賞金100万円を獲得するなど、これまでに合計15頭が通算22勝をあげている(2月14日現在)。

 

マイネルマーク号(楽天競馬「サラブレッドオークション」サイトより)
マイネルマーク号(楽天競馬「サラブレッドオークション」サイトより)

 このオークションは原則として毎週木曜日に開催されている。2 月16日のオークションの目玉はマイネルマーク号だった。兄に天皇賞(春)を含む重賞3勝をあげたマイネルキッツ、姉に福島牝馬ステークスを制したマイネカンナを持つ良血馬。自身もアルゼンチン共和国杯で3着と好走。特別戦を含む3勝をマークしており、障害競走でも1勝しているスタミナ自慢だ。

 

 競走馬は事業用資産であるとみなされるため減価償却できる。ただし、生まれたばかりの新馬(0歳馬)などの場合は、購入後すぐに損金にはできない。これについて日本馬主協会連合会では、「早ければ馬齢1歳の9月から減価償却ができる」と解説している。

 

 所有馬の飼育・育成を委託した厩舎へ支払う管理料や、レースへの出走登録手数料、騎手や厩務員らへ支払う報酬などは、いずれも「馬主事業」に必要な経費と認められるので、そのほかの所得と損益通算すれば節税になる。仮に多くのレースに勝利し、大きなレースでも活躍するような優秀馬が出れば、節税にはならないが単純に儲かるのでよしとしたい。

(2017/02/21)