【『ザ・プライス・コレクション』】

75,600円(税込)

高額図書を手に入れて〝書籍節税〟

 ビジネスには常に「学ぶ」「調べる」「理解を深める」姿勢が重要だ。輸出入に関する法律を調べたり、技術開発のための専門知識を得たり、特許や知的財産・著作権を保護するための最新の学術研究成果を学んだりする必要が生じる。

 

 インターネットでさまざまな情報を手軽に入手できるようになったが、正確で信頼のおける情報を得ようとする場合には、いまも紙の本に頼るところが大きい。ビジネスのヒントを得るために情報誌を購入したり、最新の流行やトレンドをリサーチする目的で各種の雑誌を取り寄せたり、営業マンが買ったセールス読本や自己啓発本を会社の経費で落としたりすることも多いだろう。

 

 

初年度に全額損金算入も可能

 人事や労務、そして法務や会計のための実用書。さらには研究開発部門のための学術専門図書は事業のために欠かせないものだ。

 

 会社が事業に必要な書籍を購入したときの税務は、原則として減価償却資産の備品として処理する。書籍の法定耐用年数は5年。ただし、使用期間が1年未満のもの、もしくは1冊の取得価額が10万円未満のものは、その全額を初年度の必要経費に算入してよいことになっている。

 

 少部数しか発行されなかった医学書や建築書など、一部の高額図書を除いては、1冊の価格が10万円を超える書籍はごくまれなため、書店で購入できるほとんどの本は会社の経費で購入することができる。つまり、書籍購入費の全額を損金処理できると考えていいわけだ。ただし、「全50巻」揃いといった全書のような体裁で、「1セット(1組)」単位でしか販売されていないタイプのものは、セット価格で判断することになるので注意しなければならない。

 

 例えば1冊の価格は2万円だとしても、「20冊1セット」で販売されているような全集は税務上、全巻が揃って効用が発揮されるとみなされ、取得価額40万円として処理しなくてはならないと判断される可能性もある。

 

 

将来的に資産価値が高まる可能性も

 しかし、そうしたことを踏まえたうえで、それぞれの業種で事業上必要とみなされる貴重な書籍を購入すれば、原則として損金処理されると考えていいわけだ。「書籍節税」に最適な商品は、企業の業種・業態ごとに異なるだろうが、例えば法律書や、人事・労務、会計・経理の専門書などは業務に直接役立つものだと言えるだろう。

 

 写真の『ザ・プライス・コレクション』(小学館)は7万5600円(税込)の大型本。世界でも有数の日本絵画蒐集家として知られるジョー・プライス氏の伊藤若冲コレクションから厳選した200点を、良質の大図版で1冊にまとめている。東大名誉教授(美術史)の辻惟雄氏が監修。別冊の解説編は日本を代表する美術史家12人が執筆。DVDも付録収載。

 

 美術関係の業種ならば、応接室の本棚に高額な画集などが並んでいると接客の上でも効果的だろう。法律事務所の本棚の判例集、会計事務所のそれに並ぶ税法の各種書籍なども同様の効果が期待できる。自動車販売店にとっては、クルマの高額な稀覯本も事業に役立つ参考図書となりえる。飲食業なら古典料理のレシピ本やワインの専門書などがそれにあたる。どんな業種であっても、その道のプロならば手に入れておきたいと思う文献や専門図書が必ずあるはずだ。しかもそれが、将来的な資産価値が高まる可能性のある書籍だったとしたら……。〝コレクション〞が結果として、意図しなかった資産形成につながるかもしれない。

 

(2017/03/07)

■監修■ 節税市場の顧問税理士

田本啓先生(アレシア税理士法人 代表社員税理士)のワンポイント

 

 資本金が1億円以下で、従業員が1000人以下の中小企業や個人事業主が青色申告をしていれば、購入金額が30万円未満の書籍についても全額損金経理が可能です(少額減価償却資産の特例)。しかし、資本金が1億円を超える企業の子会社などではこの特例を使えないケースがありますのでご注意ください。1冊あるいは全巻セットでの購入金額が30万円以上の場合でも5年間で減価償却できます。ただし、古書(古本)を購入する際には、それが古文書などとして希少価値があり、その価値が時間の経過によって減らないものならば「美術品」と同様の取り扱いとなり、損金処理できないケースも考えられます。