ベルナール・カトラン

『あじさいとアルム草』226,800円(税込・参考価格)

技法:リトグラフ(石版画)/サイズ:46×72.5㎝/制作:1989年/限定部数:165部

アンドレ・ブラジリエ

『アイルランドの浜辺』237,600円(税込・参考価格)

技法:リトグラフ(石版画)/サイズ:46×64㎝/制作:1983年/限定部数/ 175部

お気に入りの名画を飾って節税

『あじさいとアルム草』BERNARD CATHELIN(翠波画廊HPより)
『あじさいとアルム草』BERNARD CATHELIN(翠波画廊HPより)

 会社で美術品を購入したときの税務処理は、「古文書」や「古美術品」と呼ばれるような歴史的価値があるものであれば減価償却資産にならず、毎年の損金に計上することはできない。それ以外の美術品でも、取得価額が100万円以上であれば、原則的に減価償却資産にはならない。

 

 しかし、100万円未満ならば減価償却できるわけで、30万円未満のものならば即時償却も可能になっている。100万円近く出せば、かなり立派な作品が手に入る。30万円でもある程度の作品が入手できることは間違いない。将来的に価値の上がりそうな物故作家の掘り出し物を探したり、有望な新人作家の作品を発掘したりするのも面白いだろう。

 

 以前は1点20万円(絵画は号あたり2万円)未満の美術品が減価償却資産とされてきたが、現在ではその基準金額が100万円未満にまで引き上げられている。金属製の彫刻などの美術品は耐用年数が15年、絵画や陶磁器などは8年となっているので、例えば80万円の絵画を購入した場合、定額法なら毎年10万円を減価償却費として損金計上することができる。また、資本金が1億円以下の中小企業の場合、購入額が1点につき30万円未満ならば、その年に全額一括で損金処理できる。

 

 専門商の側でも、節税に適した価格帯の美術品を数多く取り扱うようになってきている。とくに絵画を取り引きする画商にその傾向が強く、購入者が圧縮したい黒字の金額にあわせて、30万円未満の作品を数点購入するよう促すケースも増えているようだ。

 

『アイルランドの浜辺』ANDRE BRASILIER(同)
『アイルランドの浜辺』ANDRE BRASILIER(同)

 美術商が集中する東京・中央区京橋に店を構える翠波画廊は創業27年のアートギャラリー。ここでも、「節税絵画」の一例としてベルナール・カトランやアンドレ・ブラジリエの作品を取り扱っている。いずれも点数限定のリトグラフ作品で、過去の取引実績による参考価格はカトランの『あじさいとアルム草』が22万6800円(税込)、ブラジリエの『アイルランドの浜辺』が23万7600円(同)。この画廊ではこれらを「少額減価償却資産としてのご提案作品」と紹介している。

 

 即時損金として経費処理したい場合には、1点30万円未満の気に入った絵画などを探せばいいだろう。購入したい美術品が30万円以上100万円未満のものならば、数年をかけて減価償却していくことになる。会社の応接室や会議室、建物のエントランス、クリニックの待合室、美容院や飲食店の店内など、「事業用」として美術品を飾っておける場所は多岐にわたる。将来的な資産価値だけではなく、用途や目的に合わせた作風のものを選ぶといいだろう。ただし、美術品の取得価額は、作品の本体価額に引取運賃や運送保険料、据付費用などを加えたもので判定されることになるので、これらを含めた金額が100万円未満・30万円未満となるように注意したい。絵画であれば額装代、陶磁器であれば箱代なども取得価額に含むことになる。

 

 なお、販売用目的で美術品を購入した場合には、それを売却した時点で仕入原価として経費にできるが、販売前は在庫として棚卸資産に計上することになる。また、社長の自宅に飾る美術品を会社で購入すると、本人への給与・賞与として取り扱うことになるため源泉所得税の徴収が必要になる。贈答用として購入した場合には寄付金扱いになり、一定の限度額を超える金額は経費にできない。

(2017/02/28)

■監修■ 節税市場の顧問税理士

田本啓先生(アレシア税理士法人 代表社員税理士)のワンポイント

 

 即時償却した美術品を売却する際には、その譲渡利益に課税されます。減価償却した美術品も同様で、残存価額との差益には課税されることを覚えておきましょう。また、個人が会社から美術品の贈与を受けた場合には一時所得となりますが、その美術品が50万円以下のものなら所得税がかかりません。美術品は、その使用目的や購入金額によって取り扱いが異なるケースがあります。法人の場合は購入目的を明確にしておくと税務調査のときに役立ちます。社内の稟議書などを保存しておくとよいでしょう。