銀行の〝ツボ〟はどこ?

個人保証はこうして外せ

過去の不正な会計処理も不問


 融資に当たって経営者に求められることが多い個人保証を外すための枠組みを定めた「経営者保証に関するガイドライン」が導入されたのは2014年のことだ。約4年が経ち、ようやく制度が浸透してきたのか、法人と個人の経理が区分されていなかったり過去に不正経理があったりといった融資の上でマイナスとされる要素を持つ企業でも個人保証を解除できるケースが生まれつつある。保証解除のコツや、金融機関との関係醸成のために欠かせないポイントを見てみたい。


 中小企業が融資を受ける際、金融機関は少しでも融資額の回収可能性を上げるために個人保証を付けたがる。しかし社長個人に保証債務を負わすと、積極的な経営判断や事業承継を妨げる要因となることから、金融庁が「一律に保証債務を課すのではなく、将来の事業性に問題がなければ解除することも検討せよ」との方針のもと導入したのが、経営者保証のガイドラインだ。

 

 中小企業庁の統計によれば、制度が開始した14年2月から17年9月までの3年半で、政府系金融機関が関与した融資のうち、ガイドラインの適用によって保証を外せた融資の割合は全体の26%で、4社に1社の割合だった。1年目には19%だったが、そこから24%、32%と年ごとに着実に増加し、徐々にではあるが制度が浸透しつつあることが分かる。

 

 ガイドラインが定める個人保証の解除を検討すべき要件は、①法人と経営者の資産関係が明確に区分・分離されていること、②返済能力に問題のない財政基盤があること、③財務状況を適時適切に開示する経営の透明性が確保されていること――の3つだ。

 

 つまり「個人保証を外しても返済に不安がない」と金融機関を納得させることが求められるわけだが、実際には、会社と個人の財布を混同しているオーナー企業や、会計処理に不明瞭な部分のある中小企業は数多く、そうそうガイドラインの描く理念どおりにいかないというのが実状だ。

 

保証解除が認められたケースの共通項とは?

 しかし制度開始から約4年が経過し、金融機関も様々なケーススタディーを積んで余裕が出てきたのか、最近では経理の区分されていないオーナー企業であったり過去に不正経理をした〝前科〞があったりしても、個人保証が解除された事例が生まれつつある。

 

 昨年末に中企庁が発表した参考事例によれば、50年以上の業績を持つあるオーナー企業は、社長個人と会社の資産の分離がされていなかったものの、息子への事業承継を機に、社長、息子の両方に個人保証を課さない判断がなされた。将来に向けて、法人と個人の経理区分の必要性をオーナー家族が認識し、顧問税理士の指導のもとで工場や社用車の名義を個人から法人に変更するなどの取り組みを行っていることや、承継へ取り組み始めた当初から銀行を交えて今後の経営計画を作成するなど連携が取れていることを地域銀行は評価した。

 

 また過去に不正な会計処理が発覚した青果・園芸専門の農業組合は、外部の専門家を交えた財務健全化に取り組み、9年をかけて債務超過を解消したところ、不正経理に関与した旧役員、改善に取り組んできた現役員ともに、今後は個人保証を付さないことが認められた。不祥事以降の適切な情報開示などによってメーン銀行に経営姿勢が評価されたもので、その後、メーン以外の金融機関からも無保証での融資対応を勝ち取ることができたという。

 

 ガイドラインの要求する基準に達していないにもかかわらず保証解除が認められたケースに共通するのは、金融機関と情報を共有して、ある程度の関係性を構築できているという点だ。

 

「銀行員は利益重視」

 ガイドラインはそもそも「決算の数字だけでなく事業性を評価しろ」という金融庁の方針のもとで始まったが、事業を評価すると言っても、ただでさえ世界的に経済情勢が不安なご時世に、融資先の将来を予測するのは容易ではない。かつてより事業性を考慮するようになったとはいえ、今でも金融機関が重視するのはあくまで財務諸表で、その上で金融機関との対話の場での説明の正確さ、顧問税理士との関係性といった点を観察して、金融機関は会社の〝事業性〞を評価しているわけだ。

 

 例えば税金面から見た良い決算書というのは、利益をなるべく減らして節税できる決算書を指す。そのため顧問税理士は利益をできるだけ圧縮した決算書を作るが、銀行員は見方が異なる。

 

 銀行取引コンサルタントの上田真一氏が本紙の姉妹紙『税理士新聞』の連載で、「銀行員は利益重視。利益が大きい方が返済を受けられる可能性が高くなるので、貸しやすくなる」と語っているように、銀行員から見た良い決算書というのは、利益があるかどうかだ。

 

 もちろん粉飾といった「嘘」がないことは大前提だ。税負担を減らすことも会社にとっては重要で、どちらが正解であるという話ではないが、こと個人保証を外して社長の個人資産をリスクから遠ざける点で見れば、税負担と利益額の調整が決算書を作成する上での大きなポイントとなることは間違いない。

 

 このように融資を受ける上では、銀行員にとって〝見栄え〞の良い、それでいて嘘のない決算書を作り、社長がその内容についてしっかり説明できることが求められる。銀行は金融庁の指導によって「事業性評価」を求められているのだから、そうした銀行の〝需要〞に応える財務諸表を作り、しっかりした経営姿勢を見せることで、個人保証なしの融資を受けられる可能性は飛躍的に向上する。

 

 社長の個人資産を守るためにも、また円滑な事業承継につなげるためにも、融資にかかる個人保証が外せるかどうか、税理士と協力してぜひトライしてみたい。

(2018/04/09更新)