固定資産税を確認するチャンス

今年は3年ぶりの評価替え

自治体のミス連発で納税者に追い風


 3年ぶりに固定資産税の評価額が見直される基準年度がやってきた。普段は、たとえ自分の納税額に誤りを見つけても「据置期間はダメだよ。文句があるなら評価替えの年に来い」と、なかなか是正に応じてくれない自治体が多いが、基準年度である今年こそ、そのセリフを弾き返したい。適正ならばそれでよし。誤りを見つければ儲けもの。全国で課税ミスが相次いでいるだけに、減税の可能性は低くはない。納税者に追い風が吹いている今こそチャンスだ。


 固定資産税は1月1日時点で所有している土地、家屋、償却資産にかかる地方税で、毎年4月頃から納税通知書が届けられる。所得税のような納税者による申告納税制度を採用せず、役所の側が一方的に税額を決定する賦課課税方式である。

 

 そのため、本来なら誤りなどあってはならないのだが、全国の自治体で課税ミスが絶えない。

 

 あってはならない課税ミスが起きる原因はいくつかあるが、最も大きいのは、国税と違って課税担当者が数年に一度のペースで異動になるということだ。今年は固定資産税課の職員でも昨年までは下水道課や戸籍課にいて、税金の素人ということもある。そうした人的な配置の問題で現実的に「うっかりミス」が多発している。

 

 数ある税金のなかでも固定資産税は非常に専門性が高く、建物であれば課税標準のベースとなる家屋調査票の作成には建築積算の知識が必要になる。税理士であっても税額の根拠を明確に示せる人は少ないといっていい。

 

還付は20年分に

 そうした理由から全国で課税ミスが多発しているのだが、問題が表面化して公式に誤りを認めているのは、実際にはごく一部とみていい。

 

 固定資産税額の再鑑定を行う業者によれば、「明らかな誤りを指摘してもとぼけたりごまかしたりして納税者の主張を受け入れない自治体がほとんど」なのだという。そして数字の記載や計算の間違いなど、どうにも逃げられなくなると出てくるセリフが「評価替えのときでないと訂正できません」というものだそうだ。

 

 固定資産税は、土地は路線価で、建物は再建築費で、償却資産は耐用年数でそれぞれ税額が算出されるのだが、償却資産の評価額は毎年見直されるものの、土地と建物に関しては、分筆された土地や増改築された建物以外は事務処理の煩雑さから3年に1度の「評価替え」で行われることとなっている。変更等はこの評価替えの年でないとできないという理屈だ。

 

 そのためこの鑑定業者は「今年は3年に1度の稼ぎ時」と語るが、プロでなくても税額の誤りを見つけた際には訂正させやすいことは確かだ。

 

 固定資産税の課税ミスは毎月のように報道されているが、ここ数年の特徴として注目したいのは、過誤徴収に対する還付期間が、以前のような5年分ではなく、20年を上限として過大であった全ての期間となっていることだ。

 

 これには2010年の最高裁判決がじわじわと効いてきているものと思われる。この判決では、自治体が課税処分を確定しても、それとは別に損害を被ったときは国家賠償を請求できるとした。つまり、納税者が課税ミスを正すように役所に突っかかっても、これまでは5年分を返還すれば済んだものが、これからは国賠訴訟で20年分まで払う必要が出てきたということだ。しかも、この還付金には加算税がつくため、自治体としては先延ばしにすればするほど大きな損失になる。

 

 また、全国の納税者が地方自治体のいい加減な税務行政に声を上げ始めたことも大きい。前出の再鑑定業者は2010年から固定資産税の見直しをビジネス化して取り組んできたというが、「これだけ多くの報道があるので、最近は営業をしなくてもホームページだけで依頼が来ます。最高裁の判決もあり、まさに納税者に追い風です」と、今がチャンスと語った。

 

全国で過徴収が発生

 さらに、課税にあたって自治体が定めていたローカルルールが裁判所からダメ出しをされるケースも出てきた。昨年12月には、大阪市が独自に規定した補正率が大阪地裁に「合理的な根拠がない」と、全面的に否定されている。一昨年には札幌市でも同様の判決があり、今後も各地で表面化しそうだ。

 

 埼玉県内のある自治体では、「地上3階建以上の建物は、地下があるとみなす」と決め、ありもしない地下の部分も固定資産税の対象にして課税していたことを納税者の指摘で訂正するというケースがあった。このとき納税者は、「公にはしないことを条件に還付をする」という提案を市から受け、それを了承している。

 

 全国に約1700ある自治体には、一般の納税者の感覚では考えられないような独自ルールも存在する。まずは自分の資産が適正に課税されているかどうか、根拠を示させることで明るみにでる事実も多いだろう。

 

 ただ、固定資産税は地方自治体にとっては税収の4割を占める重要な財源だ。自治体ではミスを出さないことはもちろん、いかに還付をしないかにも力を注いでいる。納税者が「おかしいのでは…」と指摘しても、どうにかして煙に巻こうとすることは、これまでの姿勢が示しているとおりだ。税理士などプロの力は借りるべきだろう。

 

 固定資産税は資産を所有している限り半永久的にもっていかれる税金だ。さらにほとんどの場合で都市計画税もついてくる。たとえ1%でも軽減する意味は大きい。追い風を背に受け、取り組んでみたい。

(2018/05/30更新)