年間1万2千円以上

花粉症の薬を買って税優遇

家族全員分を合計してもOK


 ドラッグストアなどで買える一部の市販薬の購入費が年1万2000円を超えると税優遇が受けられる「セルフメディケーション税制」が今年1月に始まっている。同じ家計で生活しているなら家族全員分の薬代を合計してもよく、対象となる市販薬は1600品目以上と幅広い。1箱千円以上することもある花粉症の薬も対象となっているため、今の季節に家族の誰かがその症状に悩まされているようなことがあれば、是非利用を検討したい。


 今年からスタートした「セルフメディケーション税制」の対象となるのは、スイッチOTC薬と呼ばれる一部の市販薬だ。もともとは医者の処方せんなしでは手に入れることができなかったが、長年にわたる処方の実績などを踏まえ、今ではドラッグストアなどで買うことができるようになった。医師の指示で処方されていた薬だけに、効き目の大きなものが多いことが特徴だ。

 

 このスイッチOTC薬には、今年1 月から、パッケージに専用のマークが付くようになっている(図)。セルフメディケーション税制では、このマークの付いた薬の購入費が年間1万2千円を超えたときに、超過分が所得から控除される。家計が同じであれば本人分だけでなく家族全員分を合計することも可能で、上限は購入費用10万円までとなっている。つまり最大で8万8千円が控除されることになる。

 

1箱2000円する薬も対象

 日常生活を送るなかで、市販薬だけで1万2000円はそうそう超えないと思いがちだが、「花粉症」の薬も多く対象に入っているとなれば、制度の利用が視野に入ってくることも多いのではないだろうか。花粉症の薬には飲み薬、点眼薬、点鼻薬などさまざまなものがあるが、これらの中には千円を超えるものも数多い。

 

 現在、セルフメディケーション税制が利用できる市販薬は1601品目で、品目リストは厚生労働省のホームページから確認することが可能だ。製品名が50音順に並べられているだけなので用途や薬効ごとに検索することはできないが、かぜ薬や胃腸薬、湿布などさまざまなものがある。

 

 そのなかでも花粉症の薬として代表的なものを挙げていくと、まず飲み薬ならばアレグラFX、アレジオン10、アレジオン20、コンタック600ファーストなどが挙げられる。アレグラFXやアレジオン20などはそれぞれ定価で約2千円するため、ぜひとも同税制の利用を考えたいところだ。

 

 また点眼薬なら、アイリスAGガード、アルガード鼻炎クールアップEX、ザジテンAL点眼薬などが制度対象となる。鼻炎薬ならザジテンAL鼻炎スプレーαや、花粉症・季節性アレルギー専用を謳っているナザールARなどが税優遇の対象になっている。

 

 対象薬を購入した際のレシートには商品名の横に「★」や「セルフメディケーション税制対象」などと記載される。翌年の確定申告時に添付する必要があるため、薬を買った時のレシートは保管必須だ。もし捨ててしまったりなくしてしまったりすると、レシートを再発行してもらわなければ税優遇を受けられないので注意したい。

 

医療費控除とどっちが得?

 同制度を利用する上で忘れてはならないのが、10万円を超えた医療費を控除できる従来の医療費控除との併用はできないことだ。どちらが得になるかは条件次第だが、おおむね医療費全体で18万8千円を超えるようなら、従来の医療費控除のほうが有利だと言えるだろう。医療費が10万円超18万8千円以下で、その内スイッチOTC薬以外の医療費が8万8千円以下の時はセルフメディケーション税制の控除額が大きくなる。8万8千円超なら従来の医療費控除が有利だ。

 

 また制度を利用するためにはもうひとつ、「健康増進に向けた一定の取り組み」をしていることが条件となっている。厚生労働省のQ&Aによれば、この取り組みとは、①健保や国保が実施する人間ドックや各種の健康診査、②市町村が健康増進事業として行う健康診査、③インフルエンザなどの予防接種、④勤務先で行う定期健康診断、⑤メタボ健診などの特定健康診査、⑥市町村が実施するがん検診――となっている。

 

 これら全ての取り組みを行う必要はなく、どれかひとつでも受けていれば税優遇を適用することが可能だ。最も簡単なものはインフルエンザの予防接種あたりだろうか。ただし、市町村が自治体の予算で住民サービスとして行う健康診査や、自費で任意に受けた健康診査などは対象とならないので注意したい。

 

 市販薬による出費がある程度かさむのなら利用を考えたいセルフメディケーション税制だが、その対象となる医薬品は、もともとは医者の処方せんなしでは購入できなかった医薬品だ。セルフメディケーション税制の対象となっていない市販薬に比べても薬効が強く、副作用があるものも多い。

 

 税優遇の対象だからと選ぶのではなく、自分の症状に合ったものを購入するよう心掛けたい。また税優遇を受けたいがために医者に行くのを我慢し、症状が悪化してしまっては、それこそ本末転倒だ。あくまで自分の健康を第一に考えて医・薬を選択したい。

(2017/05/03更新)