コンテナ節税に国税当局のメス

相続税対策でも人気


 土地を有効活用でき、相続税対策にも有効だとして資産家の注目を集めていた「コンテナ節税」が、今後は使えなくなりそうだ。短い年数で減価償却できるコンテナの特徴を生かして多額の損金を発生させることが同手法のメリットだが、最近になって国税当局に否認される事例が相次いでいる。国税はコンテナ節税の何を問題視したのか、否認に至った背景を探る。


 コンテナやトランクルームなどを扱うエリアリンク社(東京・千代田区)は2月中旬、特別損失を計上する内容の文書を開示した。それによれば、「販売したコンテナをお客様から再度購入するなどの対応を行う可能性が生じた」という。

 

 同社が提供するサービスは、土地オーナーにコンテナを購入・設置させて、それを一括して借り上げる「リースバック方式」と呼ばれるもので、コンテナは同社が管理してトランクルームとして利用者に貸し出し、その賃料をオーナーに支払う。オーナーのメリットとして同社は「安定収入」、「他の用途が難しい土地の活用」、「低コスト」、「相続税対策に有効」をうたっている。

 

 コンテナ設置が節税になる理由の一つには、コンテナがアパートやマンションといった不動産より減価償却に時間がかからないことが挙げられる。アパマンでは数十年をかけて減価償却していくところを、コンテナだと場合にもよるが初年度に半額以上を損金算入することができ、償却期間も3〜7年と短い。コンテナから得る賃料は不動産所得として他の所得との損益通算が可能で、コンテナで発生させた損金によってトータルの税負担を抑えられるわけだ。

 

 さらにコンテナ節税は、相続税対策にもなる。エリアリンク社は相続税について「アパート・マンションとトランクルームは同様の効果が得られます」として、3億円の財産を持つ人が1億円弱のトランクルームを建設することで、相続税を4千万円以上減らせる事例を紹介している。こうした複数の節税効果から、コンテナ節税は土地オーナーの注目を集めてきた。

 

備品ではなく建築物と認定

 しかし最近、国税当局からコンテナの税務処理を否認される例が相次いでいる。エリアリンク社が今回発表した文書によれば、「当社がコンテナを販売したお客様が、税務当局より、建築基準法に基づく建築確認の申請をしているコンテナについて、『器具・備品』ではなく『建物』としての耐用年数を適用すべき旨の更正処分を受ける事態」が発生した。同様の指摘を受けて修正申告を行った事例も数件発生しているという。

 

 コンテナが節税になる大きな理由は、短い年数で減価償却できるという点だ。屋外に置いて荷物などを保管するコンテナは、原則として税法上の「器具・備品」に当たり、定率法に従って3年ないし7年で減価償却するのが一般的だ。しかしこれが「建物」と判定されると、鉄骨造だと耐用年数は34年となり、同社がリース期間として設定している10年を大きく超えて、税務上のメリットが大きく減じることとなってしまう。

 

 なぜ原則で最長7年の法定耐用年数を規定されているコンテナに建物のルールが適用されてしまうのか。その理由の一つには、エリアリンク社が同社の運用する全てのコンテナについて建築確認申請をしているという点があるだろう。コンテナは原則として「器具・備品」だが、建築確認がなされた時点で「建物」として扱われる可能性は避けられない。

 

 では建築確認申請をしなければよかったのか。エリアリンク社は「藪をつついて蛇を出す」行いをしてしまったのかと言えば、そういうわけでもない。トランクルームに利用するコンテナについては建築確認申請を行うよう、国土交通省が厳しい指導を行っているという事情があるためだ。

 

固定資産税上の建築物

 そもそも貨物輸送に使われるのが本来の目的であるコンテナが、それ以外の用途をメインに使われるようになったのは1980年代のことだ。岡山県の業者が86年に、廃車になった貨物列車のコンテナを再利用して開いたのが、国内初といわれる「カラオケボックス」だった。その後、コンテナを再利用したカラオケボックスは全国に急拡大したが、その普及の過程の89年に国土交通省が、「いわゆるカラオケルームに転用したコンテナは、その形態および使用の実態から建築基準法に規定する建築物に該当する」との文書を出しているのだ。

 

 2000年代に入ると今度はコレクションや家財の保存場所としてトランクルームが普及する。そこで国交省は04年にも「随時かつ任意に移動できないコンテナは建築物に該当する」と周知。さらに14年にも、「コンテナを利用した建築物に係る違反対策の徹底」として、建築基準法の順守と違反建築物への指導・是正を呼び掛けた。エリアリンク社が全コンテナを建築確認申請しているのはこのためだ。

 

 建築確認をしなければ建築基準法違反となる可能性があり、確認をすれば固定資産税上の建築物と扱われて長期間にわたる減価償却を余儀なくされる。ここにきてコンテナ節税は八方ふさがりの状況に追い込まれたといえる。

 

 エリアリンク社は、「コンテナを耐用年数上『建物』として取り扱うことが適正・妥当な解釈であるのか否かについては議論の余地が十分ある」として、税務当局に対して何らかのアクションを取ることを示唆している。しかし同社の主張が認められる可能性は、現状では高くないと言わざるを得ないだろう。

(2020/05/11更新)