ふるさと納税の返礼品

競争再過熱


 昨年のルール見直しによって沈静化したはずの「ふるさと納税」の返礼品競争が、再び熱を帯びつつある。コロナ禍で損害を受けた生産者を支援するための補助金制度を追い風に、多くの自治体が「今だけ2倍」などのキャンペーンを打ち出しているためだ。豪華返礼品を「制度の趣旨に反する」として規制した総務省も、今回は静観の立場をとっている。国主導の返礼品競争が、再び始まろうとしている。


 「いつもと同じ寄付額で、より多くの量の返礼品を調達することができます」

 

 ふるさと納税の民間ポータルサイト「ふるさとチョイス」では多くの自治体がこうした売り文句を掲げて、返礼品の〝おトク〟さを強調している。「ニコニコエール品」と題した特集ページでは、通常なら5万円の寄付への返礼品である1・4キロの牛肉が今なら2万7千円で受け取れる例や、通常1万円の寄付に対する返礼品となる魚介類が5千円の寄付でもらえる例などが紹介されている。

 

 ふるさと納税の返礼品に関するルールは昨年4月に見直され、返礼品の調達費用は寄付額の3割以下にとどめるよう厳格化されたはずだ。ではなぜ同じ寄付額で、これまでの2倍の返礼品を送ることが可能なのか。

 

 「国産農林水産物等販売促進緊急対策事業」という国の取り組みが、これを可能とした。

 

 コロナ禍で旅行者は激減、外食産業も壊滅的な打撃を受けた。もちろん土産物やレストラン向けの食材などを生産していた農家や畜産家らも例外ではない。そうした生産者を救済するため、国が新型コロナ対策の一環としてスタートさせたのが「緊急対策事業」だ。

 

同じ寄付額で「今だけ2倍」

 この事業では、新型コロナウイルスの流行によってダメージを受けた生産者から、地元の生産者団体や地域協議会が農水産物などを仕入れる際に、かかった費用の半額を国が補助する。これによって自治体が負担する調達費は半分で済むことになる。

 

 昨年スタートした新たな返礼品ルールでは、調達費を寄付金額の3割以下にとどめることが求められているが、この補助金を利用すると実質、寄付金額の6割に当たる返礼品を送れるというわけだ。これが冒頭の「同じ寄付額で、より多く調達できる」といううたい文句につながっている。

 

 こうした流れを総務省は静観している。「3割ルール」はあくまで自治体が支出する調達費を指し、補助金は規制対象ではないということらしい。補助金事業を所管する農水省も「法的に問題がないことを総務省に確認済み」としており、どうやらコロナ禍にあっては、返礼品競争が再過熱しようともおとがめなしのようだ。

 

規制から一転、総務省は静観

 例えばふるさとチョイスでは、鹿児島県姶良市の「鹿児島黒牛サーロインとリブロースの600グラムセット」が紹介されている。通常であれば2万円の寄付に対する返礼品だが、現在は半額の1万円で受け取ることが可能だ。

 

 楽天ふるさと納税では、香川県三豊市の「オリーブ牛ロースステーキ500グラム」が人気だ。通常は4万円の寄付に対する返礼品だが、半額の2万円で受け取れる。また、ふるなびでも「新型コロナ禍生産者応援企画」として、鹿児島県志布志市の「黒毛和牛高級部位700グラム」のセットを、寄付金2万円で受け取れる返礼品として紹介している。

 

 返礼品は肉だけに限らず、「うなぎの白焼き5尾」(鹿児島県大崎町)、「ほたての貝柱1・3キロ」(北海道枝幸町)、「高級マスクメロン2玉」(茨城県鉾田市)、「かご入り丹波松茸」(京都府亀岡市)など、幅広い農水産物がラインナップされている。

 

 もちろん補助金事業は予算に限りがあるため、キャンペーンは期間限定となっている。毎年、年末にふるさと納税をしているひとは、早めに動かないと間に合わないかもしれない。

 

 さらに言うまでもないが、人気の返礼品には寄付が集中する。ある九州の自治体は〝今だけ2倍キャンペーン〟を実施した結果、寄付件数がそれまでの10倍に増加したという。ほしい返礼品が品切れということも十分に考えられるので、今年は早めの寄付を心がけたほうがいいだろう。

(2020/11/10更新)