3月決算直前!

今なら間に合う生保節税

決算前にできる対策を再確認


 3月決算法人が事業年度の終了を間近に控えている。黒字になりそうな会社は、年度内に損金になる必要経費を支出することで納付税額を減らすことができる。会社の損益が確定するのは事業年度が終わってからだが、年度末の1〜3カ月前におおよその業績見込みを知っておかないと、せっかくの節税チャンスを逃すことになる。数字をきちんと把握したうえで、節税につながる支出の代表格である生命保険の活用を検討したい。


 決算対策の代表的な保険商品が養老保険だ。会社が保険契約者になり、被保険者を社員や役員、満期保険金受取人を会社、死亡保険金受取人を被保険者の遺族にすると、社員が保険の満期前に死亡したときは遺族の生活保障に役立ててもらい、何事もなく満期を迎えれば会社が退職金資金に充てるという事業継続のための保障になる。

 

 税金面では、支払った保険料の半分を損金にできるというメリットがあるため〝節税商品〞として重宝されてきた。社員全員を対象に加入していれば「福利厚生費」、一部の社員だけを対象にしていればその社員への「給与」として損金計上する。

 

 しかし、養老保険の販売をやめる保険会社も多数出ている。マイナス金利政策で保険料の運用先である国債の利率が低下し、高額な満期保険金を保険会社が確保しづらくなっていることが大きな理由だ。

 

保険の種類はいろいろ 目的に応じた選択を

 養老保険以外にも節税につながる保険はある。経営陣の死亡時や勇退時に備えて加入する「逓増定期保険」もそのひとつ。損金にできる割合は被保険者の年齢や保険期間に応じて異なり、支払った保険料の全額、2分の1、3分の1、4分の1となっている。

 

 逓増定期保険の特徴は、死亡保険金の額が年々増加し、保険期間満了までに最大5倍にもなることにある。長く加入すればするほど死亡時の補償は格段に手厚くなり、経営者が死亡したときの経営立て直し資金を確保しやすくなるわけだ。

 

 また、解約時に受け取れる「解約返戻金」の返戻率が加入後の早い段階でピークになるのも特徴。商品のなかには加入後5〜10年でピークを迎え、支払った保険料のほとんどが戻ってくるものもあり、節税しながら短期に退職金の財源を確保できる。ただし、ピークを超えると解約返戻金は徐々に減っていくので、退職金の手当として考えているのなら計画的に加入しなければならない。

 

 このほか、支払保険料が損金になり節税につながる保険に、長期平準定期保険、がん保険、生活障害保障型定期保険などの商品がある。また、決算対策の検討を機に保険の必要性を見直した結果、資産形成や社員の死亡保障を手厚くする必要があると考えれば、節税面だけにこだわらず、支払い保険料が損金にならない終身保険を利用することも考えられる。

 

 生命保険に加入していると、一時的な運転資金不足に陥ったときの緊急手段として、解約返戻金や契約者貸付制度による借入金といった形でお金を受け取ることもできる。商品それぞれの特性や会社の台所事情を踏まえ、税理士、保険外務員、ファイナンシャルプランナーなどの専門家の意見を聞きながら、自社に即した保険を選ぶようにしたい。

 

事業用資産の年度内修繕など保険以外の対策も

 生保への加入以外にも、決算前にできる節税策はある。年度内に事業用資産を修繕するのもひとつの手だ。事業所、機械装置、賃貸不動産、自動車といった事業用の固定資産を修繕・修理すると、その支出は経費として損金になる。ただし、修理をしたことで固定資産の価値が高まり耐久性や資産価値が増すようであれば、修繕費計上が税務署に否認され、一括経費処理できない「資本的支出」と判断されるので注意が必要だ。

 

 損金になる支出をこつこつ積み重ねていく方法もある。代表的なのは備品や消耗品を年度内に買うこと。青色申告をしている中小企業は、30万円未満の減価償却資産を年間300万円まで全額経費にできる。パソコンやプリンターの買い替えを予定しているなら、年度内の購入を検討したい。

 

 社員旅行の費用も損金にできる。4泊5日以内で、参加する社員が会社全体の半分以上なら、一般的な相場と比べて高額でない限り、社員が旅費相当額を給与として受け取ったことにはならず給与課税されることはない。

 

 法人税の節税策を考慮するのは黒字が出そうな会社だけだが、赤字法人でも決算対策は必要だ。決算の数字が悪いと対外的な信頼が落ち、特に資金繰りにマイナスの影響が出かねない。融資の申し込みには2〜3年分の確定申告書や決算書などの資料の提出が求められるが、そこでは次年度以降の返済能力を示すことが求められている。

 

 財務改善策には例えば売掛金の早期回収がある。売掛金は利益に計上されるが、現金化されていないのでキャッシュフローとしてはマイナスに働く。金融機関は返済の原資としてキャッシュフローを重視するため、常態的に売掛金が膨らむ傾向があれば、返済能力を疑われかねない。決算対策のみならず普段から心がけておくべき対策でもあるが、決算前に売掛金の整理や早期回収を行い、可能であれば取引先に支払いサイトを短縮するように依頼したい。

 

 決算後に帳簿上の数字を動かすと、税逃れや粉飾を疑われる原因になる。事業年度が終わった後にできる決算対策はあまりないのが実情だ。打つべき手は決算対策の目的が節税なのか、黒字決算なのか、あるいは「赤字でも将来性の見える決算」なのかによって異なるが、共通するのは早めに業績見込みを把握し、事前に対応しなくてはならないことだ。事業年度が終わる前に税理士と話し合う機会を設け、早めに対策を講じるようにしたい。

(2017/02/28更新)