宗教法人の収入

課税・非課税の境界線は?


 寺や神社などの宗教法人は、宗教活動による所得については課税されないが、収益事業で受け取った所得には法人税の納税義務がある。

 

 法人税法施行令には、課税対象になる収益事業として「物品販売業」「不動産貸付業」「旅館業」「倉庫業」など34 種類の事業が列挙されている。例えば、神前婚や仏前婚などの結婚式の運営は宗教活動であり、収益事業にはならないが、挙式後の披露宴のための宴会場の提供、飲食物の提供、衣装の貸し付けを有料で行うときは、席貸業や飲食業、物品貸付業として収益事業になる。

 

 寺が観光客の宿泊を受け付ける「宿坊」も収益事業(旅館業)に該当する。ただし、宗教活動に関連して利用される簡易な共同宿泊施設で、その額が全ての利用者につき1泊1千円、食事を提供する宿坊は2食付きで1500円以下であれば課税されない。

 

 宗教法人が境内の一部を駐車スペースと定め、時間極めで不特定の人、または多数の人に有料で貸すときや、月極めで継続して同じ人に貸すときに料金を受け取る場合は収益事業(駐車場業)になる。駐車場用として土地を貸し付ける事業(不動産貸付業)も課税対象だ。

 

 また、寺で販売するお守りやお札、おみくじの代金を受け取ったときは、実質的な喜捨(金品の寄付)とされ、その所得に税金はかからない。一方で、一般の物品販売業者でも販売するような絵はがき、写真帳、暦、線香、ろうそくの販売は収益事業(物品販売業)とされ、課税の対象となる。

 

 なお、収益事業を行わず、法人税の確定申告書を提出する義務のない宗教法人でも、布施収入などを含めた年間の収入金額(資産の売却による収入で臨時的なものを除く)の合計額が8千万円を超えるときは、その事業年度の損益計算書を所轄の税務署に提出しなければならない。(2016/10/29)