取締役を退任して監査役に

退職所得の優遇は受けられる?


 取締役だった会社役員が退職した後、監査役などに肩書きを変えて、引き続き会社に残ることがある。このように役職名を変更(分掌変更)したときに、肩書きだけが変わり、実際の仕事や報酬が変わらないのであれば、退職時に受け取った退職金は、所得税の計算上でほかの所得よりも優遇される「退職所得」にはならない。

 

 受け取った退職金を退職所得にできないのは、分掌変更後も代表権がある人や、代表権がなくても実質的に経営上の重要な地位を占めている人だ。社長を退職しても会長として会社の決定権があるのであれば、税務上では退職したと判断されない。

 

 また、分掌変更しても報酬が変わらないときには、税務上の退職手当にはならない。分掌変更前からおおむね50%以上減少していれば退職手当として税優遇を受けられる。役員退職給与規定や退職後の取締役会の議事録によって、きちんと報酬引き下げや仕事の変更について記録しておく必要がある。

 

 勤務先から受け取る退職手当は、退職後の生活のための支給という意味合いがあることから、他の所得と比べて税金面で優遇される。退職所得控除として、勤続年数が20年以下の人は「40万円×勤続年数」(下限80万円)、20年超の人は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」が所得から差し引ける。また、控除後の所得の2分の1だけが課税対象になる。退職手当は他の所得と分離して所得税額を計算するので、高い所得税率が掛けられにくい。(2016/11/05)