事業承継で消費税トラブル

届出を忘れずに


 相続で事業を受け継いだときに、親(被相続人)の事業が消費税の課税事業であったか否かを見逃すと、思わぬ税負担を被ることがある。

 

 消費税の納税額は原則的に、課税期間の売上に掛かる消費税額から、仕入れに掛かる消費税額を差し引いて算出する(原則課税制度)。高額な設備を購入したときなどは、消費税の課税仕入額が課税売上額を上回ることがあるので、その分の消費税は還付される。

 

 ただし、消費税が課税されない免税事業者や、受け取った消費税額に業種ごとの「みなし仕入れ率」を掛けて税額を算出する制度(簡易課税制度)を適用している事業者は、そのままでは還付を受けられない。

 

 消費税の課税期間の開始前までに「消費税課税事業者選択届出書」と「消費税簡易課税選択不適用届出書」を提出する必要がある。ここで気をつけなければならないのは、被相続人が生前に提出した課税事業者選択届出書や簡易課税選択届出書の効力は、事業を受け継いだ相続人には及ばない点だ。

 

 事業主の名義が変更したときには、新たに相続した事業主の名義で届出書を提出しなくてはならない。高額な設備投資をする予定にもかかわらず、親の事業が免税事業だったことに気づかないまま放置してしまうと、消費税の還付が受けられなくなってしまう。(2016/07/08)