【聴こえない国】(2019年2月号)


日本は、「よく聴こえない国」のようだ。難聴者に対する補聴器の普及率が、欧米諸国のそれよりも格段に低いという。日本補聴器工業会が調査した。購入する際に公費助成の対象となる範囲が狭いことなどが影響しているとみられる▼調査によると、難聴者への補聴器の普及率は14%にとどまっており、英国の48%、フランスの41%、ドイツの37%、米国の30%などを大幅に下回っている。補聴器を持つ人に使い心地を聞いたところ、「大変満足」「満足」「やや満足」の合計は38%で、英仏独の74〜82%と比べると満足度の低さも目立つ▼補聴器を購入する際に公費助成を受けるのは容易なことではない。会話で不自由を感じる中等度難聴や、小声や騒がしい場所で苦労する軽度難聴は、原則として助成の対象外となっている。「聴かれたらマズい」ことでもあるのかと疑いたくなるほど、政府の予算措置はお粗末なものだ。補聴器1台(片耳)は平均約15万円。経済的な負担の大きさから、購入を諦めているひとも多いという▼補聴器を使わないことでコミュニケーションに苦労し、孤立やうつ状態を招く恐れがある。交通事故の危険も高まる。医師の協力によって公費助成の拡大を国に促し、必要としているすべてのひとに補聴器を行き渡らせたい。