【無駄になりかねない】(2018年10月号)


先月号の本欄で取り上げた「インターネット・ゲーム依存症」について、またもや衝撃的な調査結果が出た。「依存」の症状が疑われる中高生が全国に約93万人いるという。厚生労働省の研究班による推計。前回調査した5年前に比べ、なんと約40万人も増加した▼オンラインゲームやSNSなどのやり過ぎにより、人間関係や健康に問題が生じるようになっても、自力ではやめることができない状態に陥る。これが典型的な「依存」の症状だ。今回の調査で「依存が疑われる」とされたのは中学1年生で10・0%(前回4・0%)、高校1年生で16・1%(同9・8%)。すべての学年で5年前よりも大幅に増加している▼ゲーム依存症患者の脳は、善悪・価値の判断や自己抑制に重要な役割を果たす部分が委縮・変質し、麻薬中毒患者のそれと似た状態になってしまっているという▼中高生の「依存」が深刻化すると学力低下に直結する。不登校や引きこもりなどと重なることも多い。相談できる機関が少なく、治療法は限られている▼増加する依存症患者。その治療費の原資は当然ながら税金だ。教育無償化にも巨額の税金が充てられているが、善悪の判断に悪影響が出て、学習意欲も学力も低下するという「依存」の問題を放置したままでは無駄になりかねない。