【水際対策】(2019年8月号)


税関は「関税および内国消費税等の徴収、輸出入貨物の通関、密輸の取締り、保税地域の管理などを主たる目的・業務とする国の行政機関」。その任務は複雑で、守備範囲はとてつもなく広い▼X線検査装置を駆使して銃などの武器や金地金が不法に持ち込まれないよう目を光らせる。もちろん、麻薬の密輸も水際で取り締まる。麻薬探知犬の活躍ぶりをニュースで目にした人も多いだろう▼武器、薬物に加え、ワシントン条約で定められた保護動物や、特定外来生物が入り込んでくることを水際で防いでいるのも税関だ▼ペット用、あるいは食用として輸入された動植物の外来種が繁殖した結果、在来種が絶滅の危機に直面しているケースもある。2017年に上陸が確認されたヒアリの被害も記憶に新しい。税関はこうした被害を未然に防ぐ役割も担っている▼厚生労働省はこの夏、5種類の「病原体」を輸入する。輸入されるのはエボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、南米出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱の病原体。いずれも致死率が高く感染症法で最も危険度が高い1類に指定されている▼生きた病原体を使えば高精度の検査ができるようになるというが、水際で奮闘している税関職員にしてみれば、なんとも複雑な気分かもしれない。