【応分の負担】(2018年6月号)


国民生活センターと消費者庁が生活用品でケガをした患者の情報を全国の病院から集める「医療機関ネットワーク事業」。事故の防止には欠かせない意義のある取り組みだ。しかし、昨年度収集できた情報数は前年度から3割以上減少した▼原因は医療機関の負担増にある。ただでさえ長時間労働になりがちな医師や看護師にとって、事故情報の収集やセンターへの報告作業は重荷でしかない▼昨年5月の改正個人情報保護法施行によって、患者情報の取り扱いが厳格化されたことも負担増に拍車をかけている。それまでは収集した情報をそのままセンターに送ることができたが、民間病院では改正法施行後、患者の同意が必要となった▼この事業は2010年12月に13病院の参加によってスタート。15年度には30病院が参加し、収集情報数も16年度で8286件となった。ところが、17年度の契約更新時には9病院が事業への参加を辞退。今年度も24病院の参加にとどまっている▼生活用品に潜む危険を患者情報から分析し、事故の再発防止に役立てる。たしかに、医療機関にしかできない重要な事業だろう。だが、こうした負担の蓄積が遠因となって、医療ミスが起きないとも限らない。国や業界団体にも応分の負担を求めるべきではないのか。