【多死社会】(2018年12月号)


少子高齢社会は、同時に「多死社会」でもある。年間130万人以上が亡くなるのだから病院の「霊安室」もフル稼働とならざるを得ない▼霊安室は本来、「遺体を短時間安置する場所」。当然、長時間の利用は想定されておらず、3〜6時間以内に遺体を搬出しなければならないとする病院がほとんどだ▼墓地埋葬法では、死後24時間を経過しなければ火葬することができない。このため遺体は自宅か葬儀場などに安置されることになる。しかし、翌日に通夜、その次の日に告別式などと段取り良くことが運ぶケースはほとんどない▼厚労省の2016年度の集計によると、火葬場は全国に4181カ所。1996年度には8481カ所あったというから半減している。都市部では火葬の〝順番待ち〞もめずらしくなく、遺体を安置しておかなければならない日数も延びる一方だ▼こうした事情から、火葬前の遺体を預かる「遺体安置ビジネス」が注目されている。火葬までの〝順番待ち〞の数日間、専用の冷蔵設備で棺を預かるサービスだ▼葬儀をせずに火葬のみを行う葬儀形態、いわゆる「直葬」が増加していることも、遺体安置ビジネスにとって追い風となっているようだ。病院の霊安室を見直すことで、こうしたニーズに応えられないものだろうか。