【機械仕掛けの神】(2015年3月号)


「デウス・エクス・マキナ」とは、演出技法のひとつを指す言葉だ。もともとはギリシア語で、それがラテン語訳されたもの。一般には「機械仕掛けで登場する神」と表現される▼ストーリーが、もつれた糸のように錯綜し、解決困難な局面に陥る。そこへ絶対的な力を持つ存在(神)が突如として現れ、混乱した物語に一石を投じて解決へと導き、一気に終幕を迎えるという演出。行き詰った物語を前触れもなく突然解決に導いてしまうようなこの手法には、当然ながら批判も多い▼手塚治虫もこれを禁忌にしたというが、多くの日本人はこの手法に抵抗を感じていないようだ。「水戸黄門」の印籠などがその典型例だといえるだろう▼さまざまな出来事に遭遇した主人公が絶体絶命のピンチに直面したところで場面が「寝室」などへ切り替わり、「なんだ、夢だったのか」という結末、いわゆる〝夢オチ〟〝目覚めオチ〟もこの手法のひとつだとされる▼複雑な課題を解決するための会議だったはずなのに、議論そのものが主題から逸脱してより複雑化することがある。ここで絶対的な力を持つ存在、〝神〟の登場が期待されてしまうわけだ▼ビジネスの課題は、あくまでも根拠と必然性を伴った因果関係に基づいて、解決策を導き出していかなければならない。社長さんは神の役を演ずることがないように心がけたい。