【機械に奪われる仕事】 (2016年5月号)


「機械に奪われる仕事」。ネットの記事や書き込みだけではなく、雑誌の特集記事でもこの話題を多く目にするようになった。2013年にオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授が発表した研究レポートが、どうやら〝元ネタ〟らしい。実際には「機械が人間の代わりにやってくれるようになる」といった意味のようだ▼オズボーン准教授はAI(人工知能)の研究を通じて「今後1020年で47%の仕事が機械に取って代わられる」と指摘。米国労働省のデータに基づいて702の職種が今後どれだけコンピュータ技術によって自動化されるのかを分析した結果だという▼これまで、技術的な進歩によって機械化された仕事といえば、たいていが単純な手作業のものだったといえる。ところが、今後はAIなどの発達により、認知能力を必要とする複雑な作業まで機械化・自動化されていくという▼機械に奪われるリスクの高い仕事としては「医療分野」「契約書・特許専門の弁護士」「簿記・会計・監査の事務員」など、専門的な知識と経験が不可欠だとされてきたもののほか、「塗装工」「手縫いの仕立屋」などの熟練を要するものも数多く挙げられている▼家電製品の登場と進化によって家事労働は〝劇的〟に減ったが、人工知能やロボットは今後、労働と経営にどれほど〝革命的〟な影響を及ぼすのだろうか▼蒸気機関、電話通信、そして自動車や家電製品。いずれも〝画期的〟な技術だったわけだが、今度の相手はただの道具ではなく、人工とはいえ「知能」だ。いい意味での〝革命的〟な変化ならば大歓迎だが、経営者と労働者の双方にとって〝致命的〟な技術ともなりえるのが厄介なところだ▼熟練工の仕事までできるほど手先が器用になり、記憶力と分析能力は医師や弁護士のそれをはるかに凌駕するロボット・人工知能。ただしクリエイティブな仕事の領域は、いまだ人間に遠く及ばないという。「機械に仕事が奪われる」その前に、クリエイティブな発想で事業の幅を広げておきたい。