【成長戦略の目玉】 (2020年2月号)


吉凶を偶然に託す占い、正邪の判断を神に託す裁判(神判)、そして神に捧げるための競技。この3つが賭博の源流であると考えられている▼日本で賭け事がはじまったのは7世紀のこと。689年に持統天皇が賭博禁止令を出したという記述が『日本書紀』に存在する。平安中期の文人、藤原明衡が世相を綴った『新猿楽記』には、バクチ打ちの心得まで記されている。「必勝ガイド」のようなものが早くも書かれていたわけだ▼それにはこうある。「一心二物、三手四勢、五力六論、七盗八害、欠ケタル所ナシ」。ようするに「心が横柄で金を持ち、賭け事がうまく気性が強い。負けても無理を言って力があることを示し、はては相手を殺しても構わない。このすべてがなければならない」ということらしい。社会学者、谷岡一郎さんの著書『ギャンブルフィーヴァー』から引かせてもらった▼カジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐる汚職事件。IR参入を目指していた中国企業から、国会議員らが賄賂を受け取っていたとされる。収賄容疑で逮捕された代議士は当時、IR担当副大臣だったというから開いた口が塞がらない▼「はては相手を殺しても構わない」―。ギャンブル依存症の問題は置き去りのまま、誰かが損をすることで成り立つカジノが、この国の「成長戦略の目玉」となっている。