【インチキ】 (2019年2月号)


あまり驚かなくなったことが、むしろ恐い。厚労省が、今度は「毎月勤労統計」でインチキな調査をやっていた。防衛省の日報問題、財務省のモリカケ疑惑をめぐる一連の文書改ざん・破棄、働き方改革を審議するための基礎資料となった「裁量労働制の労働時間」に関するデータの捏造などなど、次々に明るみに出るインチキの数々に、もうすっかり慣らされてしまった▼技能実習生の調査データも改ざんしていた。政府は労働力不足を補うために外国人労働者を受け入れる方針だが、これでどうやって「安心して働きに来てください」などといえるのか。外国人労働者だけではない。ほとんどの官公庁が障害者雇用の数値をごまかしていた。民間企業には罰則まで設けているというのに役所が不正を働いていたわけだ▼社長さんが経営判断を下す際の情報がインチキなものだったとしたらどうなるだろうか。売れてもいない商品が売れていると報告されたり、入金されると聞かされていたお金が入ってこなかったり。情報や報告が間違っていると、当然ながら判断を誤る結果となる▼社長さんは雇用や景気の動向にも注意を払っている。だから「雇用は改善された」「過去最長の景気拡大が続いている」といった情報にも敏感に反応する。だが、はたして本当だろうか。インチキやごまかしに、慣れてしまってはいけない。