M&Aで不動産取引

初期コストを低減


 不動産の売買というと、一般的には売主と買主が金銭をやり取りして不動産そのものを譲渡する取引を思い浮かべることだろう。しかし近年ではこうした通常の取引に加えて、「不動産M&A」を実行する人が増えている。

 

 M&Aは会社の合併や買収を指すが、不動産売買でのM&Aは、物件そのものを売買するのではなく不動産を所有している会社の「株式」を売買して合併、買収する手法のことをいう。買主は不動産所有会社の株式を取得することで、実質的にその会社が所有する不動産物件のオーナーとなるわけだ。

 

 M&Aでやり取りするのはす、あくまでも不動産を所有する会社の株式となる。売る側にとしては、通常の不動産売却であれば譲渡所得に法人税がかかるほか、さまざまな税負担も発生するが、M&Aなら株式譲渡益への課税一度だけで済み、手取り額が多くなるケースがある。

 

 さらに企業同士のM&Aでは、取引に先立って「デューデリジェンス(買収監査)」が行われる。買収される会社の価値をいろいろな側面から専門家が査定するので、物件の抱えるリスクを事前に把握することが可能となる。物件そのものが持つ修繕や災害リスクから、所有法人の法務上の障害までを把握しておけば、物件購入後のトラブルをあらかじめ回避することができるわけだ。

 

 不動産M&Aの流れはおおむね、①専門のM&A業者への個別相談、②アドバイザリー契約、③企業評価、④提案書の作成、⑤売買の候補先の選定、⑥トップ面談、⑦基本合意書の締結、⑧買主によるデューデリジェンス、⑨株式譲渡売買契約書の締結・決済――という流れで進む。(2019/02/12)