過大慰謝料で贈与税発生

家裁の調停証書が効果大


 厚生労働省の人口動態統計によると、日本人の離婚率は、統計開始後で最も少なかった1963年の7・47%から上昇傾向にあり、82年に20%を超え、2009年には35・8%に及んだ。現在はおよそ3組に1組のカップルが離婚する時代なのである。

 

 離婚率が高くなれば、当然ながら慰謝料や財産分与の発生数も増加する。慰謝料とは、家庭内暴力や浮気などで離婚原因を作った人が、精神的苦痛などを受けた相手に支払う「損害賠償金」だ。

 

 賠償金は、贈与税ではなく所得税の対象となる。そして所得税法で非課税と定められ、相手からもらっても原則として所得税がかからない。一方、財産分与は、離婚のときに夫婦の協力で築いた財産を2人で分け合うことをいう。単に共有しているものを分けることなので、原則として贈与税はかからない。

 

 ただし、分与された財産が一定の割合以上であれば課税されることがある。夫婦関係を営む上での夫婦の貢献度は、通常2分の1ずつと考えられ、それを大きく超えると贈与があったとみなされるからだ。

 

 また、慰謝料でも財産分与でも、離婚の目的が贈与税や相続税を逃れるためと判断されたときも贈与税が課税される。そのため財産が一方に過大である理由や、税金を逃れるための離婚でないことを証拠として残さなくてはならない。

 

 ちなみに、家庭裁判所で離婚の調停をしてもらえば、調停証書の正本がもらえるが、これさえあれば課税当局を黙らせることができるという。(2017/07/21)