「話が違う!」入社辞退者の帰省費負担も

労働条件の明示は慎重に


 入社前に受けていた説明と勤務実態が異なることで、新入社員が入社後に契約解除を申し出ることがある。この際、会社が明示した「絶対的明示事項」に誤りがあれば、社員の言い分が通るだけでなく、当該社員の帰省のための費用も全額会社が負担する義務を負う。さらに、労働者の家族に関する費用も必要になるので気を付けたい。

 

 労基法15条には、雇用契約締結前に明らかにする「絶対的明示事項」が定められていて、①契約期間、②有期労働の際の更新、③勤務する場所と業務、④時間と残業の有無、⑤賃金、⑥退職――については、書面で提示しなければならない(昇給に関する事項を除く)。

 

 さらに、退職手当や賞与、休職などについても規定があれば明示の義務を負う。労働者がこの明示事項と実態に相違があるとして14日以内に申し出れば、労働契約の解除が認められる。ただし、あくまでも上記の内容に限られるため、明示していない社内ルールなどで事前説明と相違があっても認められない。

 

 また、解除できるのは当人の労働条件に限るので、「入社してみたら先輩社員の労働条件がひどかった」ということでは解除できない。ほんの小さな見解の相違でも、最近ではすぐに「ブラック」の烙印が押され、ネット上に社名がさらされてしまう世の中だ。労務対策は治療より予防の姿勢で、争いとならないルールと社内体制を構築しておきたい。(2018/08/01)