解体費用の税務処理

目的別に異なる3種類


 建物の解体費用の税務上の取り扱いは、建物を取り壊す状況や目的によって異なり、3種類に分かれる。

 

 例えば中古物件が建つ土地を買った人が建て替えのために解体するのと、自社所有の倉庫を建て直すために一旦古い倉庫を取り壊すのとでは、それぞれ経理処理が変わってくるというわけだ。

 

 まず、土地と一緒に取得した建物を取り壊す場合には、最初から土地だけを利用する目的で購入したものと認められれば、解体時点での建物の帳簿価額と解体費用の合計額が土地の取得価額に算入される。取り壊し後の土地にアパートを建てることが目的であれば、もともと建物を利用する意思がなく欲しいのは土地だけなので、建物の取得価額と解体費用は土地の取得価格に算入すべきという考え方による。

 

 実務上では、土地と建物を取得してから概ね1年以内に取り壊しに着手すれば、土地利用のための取り壊しだとみなされるようだ。ただし1年以内の解体であっても、建物を事業に使用する目的で取得したものの火災や事故といった理由で使用を諦めて取り壊すのであれば、土地の取得価格ではなく解体経費として処理することになるので注意したい。

 

 新しく建物を建てるために、もともと自分が持っていた既存の建物を解体する場合は、建物の解体費用は全額が解体した事業年度の経費になる。また解体する直前の建物の帳簿価額についても、除却損としてその事業年度の経費にすることが可能だ。

 

 自己所有の建物を取り壊して土地を売却した場合には売却費用となり、解体費用は譲渡所得の計算から控除して処理できる。また既存建物の帳簿価額の除却損についても、同様に譲渡費用として取り扱われることとなる。(2020/06/08)