虚偽求人で罰金・懲役

書面での説明を義務付け


 労働基準法、労働組合法、労働関係調整法の「労働3法}は、それぞれ憲法28条の労働基本権の理念に沿って制定されている。このほか労働契約法、労働安全衛生法、職業安定法、最低賃金法などの労働法規は、いずれも会社側に比べて「弱い」とされる労働者を守ることを目的に作られている。

 

 その中の一つである職業安定法が昨年1月に〝改正〞されている。主な改正点は、求人をする会社に対する規制と罰則の適用が新設されたことだ。従業員募集の際に求人票に記載した労働条件について、面接や採用時に異なる内容を提示する場合には、書面で説明することが義務付けられた。

 

 例えば、求人票で基本給23万円としていたが、実際の採用にあたって試用期間中は基本給が20万円であることを伝える際には書面で理由を示さなければならなくなった。これに違反すると「虚偽求人」として6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性が生じる。

 

 経営者からすれば少々やりすぎにも見える改正だが、東京地裁では昨年3月30日に、「採用時に求人票と異なる労働条件を提示するのは違法であり、無効」という趣旨の判決を出している。実際に、求人を巡るトラブルは増加しており、2016年度に求人票と実際の労働条件が異なると職業安定所に申し出があった件数は9200件を超えた。前出の東京地裁の裁判でも、ハローワークに出された求人票では、雇用期間や定年は無いという募集内容が、実際には契約期間が1年で、定年は60歳とされていたものだった。

 

 基本的に、採用時の労働条件が低下することは「不利益な変更」にあたり、その場合には十分な説明のうえでの合意が必要となる。(2019/03/27)