相続した不動産物件

共有は税金面でお得?


 相続財産の賃貸不動産を複数人で共有することがある。共有する不動産は全員の合意がなければ売却できないなど制約も数多くあるが、税金面では得な部分もある。

 

 不動産賃貸は、その規模が一定以上になると「事業的規模」とみなされ、税務を含め様々な面での取り扱いに変化が生じる。そのボーダーラインは「5棟10室基準」ともいわれ、おおよそ、①戸建て住宅を5棟以上貸している、②マンション・アパートを10室以上貸している――のどちらかを満たしていれば、不動産賃貸業を事業として営んでいると認定されるわけだ。

 

 事業的規模と認められると様々な特典がある。例えば不動産所得は家賃収入から必要経費を差し引いて計算するが、事業的規模であれば青色申告特別控除を適用できる。事業的規模でなくても一定額の控除は認められるが、事業的規模を満たすことで所得をさらに圧縮し、所得税や住民税の節税が可能となる。

 

 また配偶者や子どもなど家族に対して給料を支払うと、青色専従者給与として全額を必要経費とすることもできる。青色申告特別控除と合わせて、所得を大きく圧縮できることになる。その他にも、家賃を回収できなくなってしまった場合、事業的規模であれば回収できないことが確実になった時点で未回収分を貸倒損失として必要経費に計上し、その年の所得から差し引くことができる。

 

 さらに火災や地震によって不動産が損害を受けた時に、事業的規模であれば、被害の全額をその年の必要経費に計上することができるなど、事業的規模と認定されると様々なメリットが伴う。

 

 複数人が共有する建物を貸し付けているケースでは、各自の持ち分ごとに部屋数を判断するのではなく、建物全体の部屋数で事業的規模を判定する。つまり全体の部屋数が10室あれば、自分の持ち分がそのうち1室だけであったとしても、事業的規模と認められて様々な税優遇を受けることができるわけだ。不動産の共有は面倒なことも多いが、1室でも事業規模と判定される点では有利だと言えるだろう。(2020/02/10)