甘く見ちゃいけない労基法

かなり厳しい刑事罰規定


 残業代の未払いや有給休暇を与えないなど、法律を無視して従業員を酷使する企業が「ブラック企業」などと呼ばれて世間からずいぶんと叩かれている。経営者のなかには、「些細なことで騒ぎすぎる」という声もいまだに聞かれるが、これだけ問題になっても減らない過労自殺や労働裁判の増加などから、すでに「騒ぎすぎ」という状態ではなくなっているとみていい。

 

 労働基準法は人を雇ううえでの重要なルールを定めた法だが、刑法や会社法のように「絶対に守らなければならない」という意識が希薄で、どちらかというと努力規定としてのお題目と捉えている経営者も少なくないようだ。

 

 だが、労基法は実際には罰則だらけの法であり、罰金のみならず懲役刑も多数用意されている。違反するつもりがなくても覚えておきたい。

 

 まず、労基法の罰則で最も重いものが、強制労働違反に対するものだ。第5条には「暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない」とあり、実際に働かせなくても「強制」しただけで処罰の対象となる。「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」というのは、労基法のなかでもダントツに厳しい。

 

 続いて「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」として、労働時間や休憩、休日、有給休暇、年少者の深夜業に対する違反など30もの項目が並ぶ。最も軽い罰則である労働条件の明示義務違反や労働者名簿の保管ミスでも「30万円以下の罰金」だ。

 

 労基法違反を取り締まる労働基準監督官は、強制的に会社に立ち入って調査(臨検)する行政監督権限と、違反者を逮捕して送検することができる特別司法警察職員の権限を持っている。企業を経営する以上、たかが労基法となめてかかってはならない相手だ。(2018/03/26)