日本版「司法取引」早くも適用

脱税にも適用可能


 6月にスタートした日本版「司法取引」が、さっそく適用された。他人の罪についての供述と引き換えに自身の罪を軽減する同制度は、虚偽供述によるえん罪の可能性もあるため慎重な運用がなされるとみられていたが、早々に初適用となった。

 

 司法取引の第1号は、三菱日立パワーシステムズがタイに建設する発電所建設に絡んだ件だ。同社の社員が事業を受注する見返りに現地公務員に現金を渡した疑いについて、会社は社員の不正競争防止法違反について捜査協力する見返りに、法人としての罰則の適用を免れたとみられる。

 

 司法取引制度は、米国などでは古くから組織犯罪の解明に役立てられてきた。米国では自身の罪を認める代わりに罪を軽くするタイプの司法取引も導入されているが、「日本版」では取り入れず、あくまで他者の犯罪についての情報提供を材料とする取り引きのみだ。

 

 対象となる犯罪は贈収賄、金融商品取引法違反、独占禁止法違反などの経済犯罪や、覚せい罪取締法、銃刀法などだが、脱税も対象となっている。今回の適用第1号では、会社が社員の罪について司法取引を行ったが、反対に、会社ぐるみで脱税を行っていた場合などには、社員が自身の罪軽減と引き換えに経営者の関与を供述するというケースも考えられる。(2018/09/10)