従業員の〝名ばかり外注化〟

消費税の脱税に当局が注視


 消費税の脱税のなかでも、従業員の〝名ばかり外注化〟はもはや定番となりつつある。従業員への給与には消費税がかからない一方で、外注費には消費税がかかる。同じ業務を担当させて同じ報酬を支払うにしても、社員を個人事業主にすることで消費税分を払えば、税負担を減らせ、還付が受けられるケースもある。

 

 さらに企業が負担しなければならない年金保険料などの社会保障費も削れるということで、この手法を使う企業は今でも少なくない。もちろん、こうした架空の外注費計上による脱税の手口は国税当局もお見通しで、すでに今年に入ってからも架空の外注費を計上したとして、兵庫県のアスベスト処理会社が約1億2千万円、福島県の太陽光発電会社が7千万円の脱税でそれぞれ逮捕、告発されている。

 

 もちろん従業員を外注化しても、それが正当な処理であれば文句を言われる筋合いはない。従業員の外注化が正当なものか脱税かは、①仕事の依頼を相手が断れるかどうか、②仕事の進め方や勤務時間、場所に指示があるか、③欠勤や遅刻をした分を支払額から差し引いているか、④その会社以外の仕事もしているか、⑤仕事の内容や業務の遂行が従業員と変わりないか――などが総合的に勘案され、判断されることになる。

 

 これまでと同じ出社形態、勤務時間、報酬で肩書だけを外注化するようなケースでは到底認められない。個人事業主と社員はまったく別物で、当人の合意を得ればよいというものでもない。たびたびの増税の苦しさに、つい社員の外注化を考えたくなることもあるかもしれないが、見せかけの外注化は脱税認定という最悪の結果を招くことになりかねない。(2019/03/15)