受取人固有の財産なのに?

例外となる「著しい偏り」とは


 生命保険金は「受取人固有の財産」とされる。税法では「みなし相続財産」として相続税の対象とはなるものの、民法では生命保険金を請求する権利は相続財産から除外され、原則として遺産分割の対象となることはない。

 

 保険金独自の非課税枠もあり、他の財産よりも優遇されることから、オーナー企業の後継者の納税資金や自社株対策の原資に最適といわれる。

 

 ただし、特定の相続人が生命保険金を受け取った結果、他の相続人との取得財産に「著しい偏り」が出てしまったケースでは若干事情が異なる。

 

 例えば親が亡くなって3人の子が相続人として残されたケースで、相続財産が預金1500万円のみだったとする。3人で500万円ずつ分配すれば円満解決できそうだが、長男だけがこれとは別に生命保険金2000万円を受け取っていたとしたらどうなるだろうか。

 

 長男からすれば、生命保険金は「受取人固有の財産」だから、自分のものだと主張するだろう。しかし、最高裁はこうしたケースで長男にノーを突き付けている。生命保険金は受取人固有の財産であるものの、「到底是認することができないほど著しいと評価すべき特段の事情」がある場合には、保険金を遺産に持ち戻して分割すべきだと判断したのだ。

 

 この「特段の事情」とは、保険金の額や遺産の総額に対する比率だけでなく、同居の有無や被相続人の介護などに対する貢献の度合い、各相続人の生活実態などが総合的に考慮されるという。複数の判例によれば、仮に金額のみを考慮して判断すると、「遺産総額に対して45%~50%を超えた保険金」がおおむね持ち戻しの対象になるようだ。(2021/04/16)