NISA非課税期間終了時の選択肢

ロールオーバーで再投資


 「貯蓄から投資へ」の合言葉のもと導入されたNISA(少額投資非課税制度)では、投資して得た利益の全てが非課税となる。利益が1千万円に達しようが1億円を超えようが一切税金がかからないというのだから夢のある制度だ。しかし、年間の投資上限額が120万円、非課税期間が5年間では、なかなかまとまった利益は生まれないだろう。

 

 だが、これらの上限を突破できる方法が一つだけある。それが非課税期間終了時に使える「ロールオーバー」と呼ばれる制度だ。5年間の非課税期間が終わると、NISA用の口座の残高は課税口座に移され、その後も投資を続けるなら利益には当然所得税が課される。

 

 しかし、このタイミングでロールオーバーを選べば、NISA口座に残った残高を使って再びその年から5年間、非課税で投資を続けられるのだ。しかもその元手となる投資資金は2017年度税制改正で上限が撤廃され、青天井となっている。

 

 例えばNISAがスタートした14年に当時の年間上限額である100万円で投資をはじめたひとが、非課税期間の最終年までに、その額を5倍の500万円に増やしたとする。そこで500万円を課税口座に移してしまうと、5年間で得た利益400万円は非課税になるものの、今後投資して利益を得た際には元手500万円との差額に譲渡所得税が課されてしまう。

 

 一方、ロールオーバーを選べば、改めてNISA口座に500万円が入り、そこから5年間で5倍の2500万円まで増えたとしても、全額が非課税となる。どこまで増やせるかは腕次第とはいえ、投資期間が単純に倍になるというのは魅力的な話だ。

 

 ロールオーバーは元手が減ってしまったケースでも有用だ。非課税期間が終了した時点でNISA口座のお金を課税口座に移すと、株などの取得価額はその時点でリセットされてしまう。100万円で買った株が5年間で70万円まで値下がりしていれば、「70万円で買った株」とみなされ、その後100万円まで値戻りすると30万円分の利益があったとして課税されてしまうのだ。だが、ロールオーバーを選べば取得価額100万円の株として6年目以降も運用できるので、元値に戻ったからといって不要な税負担を課されることはない。

 

 ただし、値上がり、値下がり、どちらのケースにしても、ロールオーバーした分はその年の投資枠を使ってしまうことに変わりはない。5年を区切りに損切りして新たな投資に乗り出すのか、粘り強く持ち続けるのか、運用者の腕が問われそうだ。(2018/05/17)