中小企業が金融機関から融資を受ける際には、経営者個人の保証を求められることがほとんどだ。
政府は中小企業の積極的な事業展開を後押しするため、2014年2月に『経営者保証に関するガイドライン』を策定。個人保証を不要とする基準を定めた。
法人と経営者の資産関係が明確に区分・分離されていることや、返済能力に問題のない財政基盤があることなどの要件を満たした企業については、個人保証を外すよう金融機関に促すというものだ。
しかしガイドライン適用から4年を経過しても、いまだに8割超の融資で個人保証を求められているのが実情となっている。金融機関側が及び腰であることも理由だが、企業側も個人資産と法人資産の区分が明確に分離できていないなど、ガイドラインの基準を満たしているとは言えないことが多いようだ。
保証を外すには、ガイドラインの求める条件を完璧に満たす必要はないが、それでも金融機関に「返済に問題はなさそうだ」と思わせるだけの材料が用意できなければならない。そこで検討したいのが、ABL(動産・債権担保融資)の活用だ。
ABLとは、企業の「商品の在庫」や「売掛金」を担保として評価する融資方法のこと。例えば人形や仏壇の小売業を営むある中小企業は、法人と経営者の資産区分が明確に分離されておらず、財務情報の適切な開示にも問題があったため、個人保証を外すことは難しいと判断された。
しかし同社の商品は特定の時期に多く売れるため平均月商に比べて在庫が多いことに加え、商品がブランド化されていて在庫が固定化するリスクも少ないとされ、動産担保としての評価が高かった。そこで商品在庫を担保とすることで、経営者の個人保証のない融資が認められたという。
この会社のように、ガイドラインの条件を満たしていなくても、ABLを活用することで個人保証を外せる例は少なくない。経営者の個人保証を外すことは、積極的な事業展開につながるだけでなく、社長自身の人生プランや事業承継にも大きく関わってくるため、様々な方法でガイドライン活用の道を探っていきたい。(2018/09/20)