電子申告の中小義務化はいつ?

コロナショックで加速するか


 今年4月から大企業はe - Taxなどを利用した電子申告が全税目で義務化された。大企業は中小企業に比べて、自社独自の経理システムを導入していることが多く、これまで電子申告システムとの互換性を想定せず、最終的には紙による申告を選択する企業が多かった。中小に比べてe - Tax利用率も低かったが、今回の電子申告の義務化で、一気に税務申告の電子化が進むことになった。

 

 中小の全面義務化もそう遠くないとみられる。財務省が2017年に作成した行政コスト削減に向けた計画書によれば、大企業の税務申告の電子化について「(中小企業を対象に)将来的に電子申告の義務化が実現されることを前提として」とある。もっとも、すでに8割近くの中小は電子申告を利用していることもあり、下地はすでにできていると言えるかもしれない。

 

 大企業を対象とした電子申告の義務化では、正当な理由なく紙で申告をした場合には「無申告として取り扱う」とされている。中小企業で電子申告が普及しているとはいえ、「どちらでもよい」と「電子申告しか認めない」では、大きく異なる。中小企業は完全電子化への対応を今から進めておいたほうがいいだろう。

 

 また税務申告の電子化の波は、企業だけでなく個人にも押し寄せている。今年からは、自営業者や個人事業主が税務申告の際に電子申告を使えば、青色申告者に認められる「青色申告特別控除」の控除枠が10万円上乗せされるようになっている。電子申告をした人に対するボーナスとなるが、同時に青色申告特別控除が一律10万円引き下げられているため、実質的には、紙で申告し続ける人に対する10万円のペナルティーとなっている。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、紙での税務申告や税務署におもむいての申告書提出に対するネガティブなイメージが生じている面は否めない。これを機に来年以降、税務申告の電子化の動きがさらに加速するかもしれない。(2020/08/03)